「キラーカブトガニ」 サメの時代を終わらせた生物

概要

原題:CRABS!

製作:2021年カナダ

配給:エクストリーム

監督:ピアース・ペロルゼイマー

出演:カート・カーリー/ロバート・クレイグヘッド/アリー・ジェニングス/プライス・ダーフィー


カリフォルニアのとある海辺の田舎町。腹に巨大な傷を負ったクジラの死体が打ち上げられた。保安官代理のハンターはさらに海辺で喰い散らかされた人間の死体を発見。それは放射能で変異した殺人カブトガニたちの仕業であった。


予告編

感想





ま~たエクストリーム(トカナ)が変な映画持ってきましたよ。

しかも勝手にサメの時代を終わらせている…

しかし「地獄の天然記念物、人間食べ放題」って相変わらず惹句は異常に魅力的ですなあ。

でもどうせ中身は「食人雪男」とか「ハングリー湖畔の謝肉祭」とか「人肉村」みたいなトホホなやつなんでしょ?もうだまされないよ。



…と思いながらも極大寒波の中サツゲキまで出向いて観てきましたが、これは驚くほど面白かったです。

エクストリームさんナメてかかってごめんなさい。



『ジョーズ』よりも凶暴で、『ゴジラ』よりも食欲旺盛、 放射能の影響で突然変異した巨大カブトガニが巻き起こす、 人類滅亡の危機! 映画史上初!カニ沸き、肉躍る衝撃と興奮! いまだかつて誰も見たことのない超絶に面白い 海洋モンスター映画がやってきた!!

(↑キラーカブトガニ公式HPより)



まさかこの宣伝文句に一字一句ウソがないとは思いませんでした。

これは確かに未だかつて誰も観ていない超絶に面白い海洋モンスター映画と言わざるを得ない。



まず、何といっても出てくるカブトガニたちがやたらとかわいくて魅力的なのがいい。

海辺で人肉に食らいつくカブトガニはもちろん、プロムに忍び込んで踊り出すDJカブトガニ、UFOキャッチャーに興じるカブトガニ、バーで酒飲んでひっくり返るカブトガニ…と、まさかあのフェイスハガーみたいなグロさを持つカブトガニでここまで上質な笑いと癒しを提供してくれようとは想像もしていませんでした。



カブトガニってその青い血液が薬の開発に大変有用なんだそうで、特にアメリカでは乱獲されては研究室で血液を抜かれまくっているという記事をどこかで見たことがあるんですよね。その写真がカブトガニ側からすると大変残酷なもので、人間って動物に対して本当にえげつないことするよなあ…と陰鬱な気分になったことを覚えています。その研究結果が医療に役立っていて自分にもどこかで還元されているかと思うと非常に複雑です。



そういう哀れなイメージがある生き物だから、安易にふざけた悪役に仕立ててほしくないとか、人類に牙を剥いたらむしろ痛快なのではないかとか、最後に退治されてしまうところは観たくないとか、社会派的メッセージもあるのか?とか、色々面倒な思惑を巡らせながら鑑賞したにも関わらず、頭カラッポにされてゲボハハハと笑わされてしまうほどの能天気なおふざけ具合。バカ映画だとは思ってたけど、まさかこれほどまでに突き抜けているとは!



ドラマ的にも手は抜いてなくて、科学マニアの高校生が彼女とプロムで踊りたいとかそういう甘酸っぱい青春の話をじっくり丁寧にやってくれます。さらに兄貴と彼女の母親との恋愛まで重ねてくるので丁寧すぎて若干冗長なきらいもありますが、そこに忍者ラドゥといういかれたキャラクターをぶち込むことで何とか眠気を振り払うことに成功しています(多分)



そして本作はただ単に出来の良いモンスターパニックというだけでなく、後半では事も無げにその枠をぶち破る超展開が待ち構えています。あれには度肝を抜かれました。一体いつの間に何のためにあんなものを用意していたのか、何の説明もないその潔さには笑うしかない。いや、確かに何か作ってはいたけどさあ…なんと自由な発想なのか。劇場は48席中30席くらいの入りでしたが、そこかしこで笑いが起きてましたからね。エンドクレジットの最後の最後までみっちり笑わせようとしてくるし、日本へのリスペクトに満ち満ちているし…端的に言って素晴らしい傑作です。これは大寒波に負けず劇場へ見に来て良かった。エクストリームさんもたまにはいい仕事するんだなあ…


コメント