「2073 スペース・サバイバル」 感想 命を懸けたくじ引き

概要

原題:ARES 11

製作:2016年アメリカ

配信:トランスワールドアソシエイツ

監督:ロバート・グッドリッチ

出演:デビッド・ハイランド/パトリシア・ストーク/アーブルド・ヒル


西暦2073年、太陽系は分裂し人類はなんやかんや宇宙で争っていた。そんな中、地球同盟のアレス艦隊にどっかから発射された巨大スピナーが激突。オットーたち4人が乗るアレス11号の酸素タンクが損傷してしまう。救助が来るまでの90時間、酸素を持たせるためには彼らのうち2人が死ぬ必要があった…


予告編

感想



4人が乗る宇宙船の酸素が足りなくなり、2人の命を選別する必要に迫られるSFスリラー。



冒頭で未来世界の独自設定を早口で一気に説明されるため、置いてけぼりを食らったようで不安になってしまいます。なんせアマプラ謎映画の中でもSFは危険なジャンルで、ナトリウム天国みたいなのもありますからね。いきなり「太陽系が分裂した」と言われても咀嚼する時間が必要なんですよ。が、そんな暇もなく宇宙船アレス11号に巨大スピナーが衝突し危機的状況に陥ってしまう。巨大スピナーって何だ。



ただ4人のうち2人しか生き延びられないとわかってからは話がとてもシンプルに。太陽系の分裂どうこうの面倒なバックグラウンドは全然関係なくなるので、泥臭く生に執着する乗組員たちが織りなす醜い人間模様を存分に愉しむことができました。アマプラ謎SF映画としてはとても良い方だと思います。



で、こういう場合どうやって生き残る2人を決めればいいのか。作中ではまずクジ引きで決めようとしますが、そう簡単に「おれハズレ引いたから死んどくわ」ともいかない。小学生のように「今のナシ!今のナシ!!と叫んでしまっても無理はない。こういうクジ引きの場合ひとりずつ引いたらダメですよね。仮に最初の2人が当たりを引いてしまったら残りの2人は何もしてないのに死亡確定なわけで、到底納得できるものではないでしょう。



なので4人で一斉にクジを引くか開示するべきだと思うのですが、だからといってそこでハズレだった時に大人しく自害できるかといえばやっぱりできない。というか生き延びたいのであればハズレを確認した瞬間に他の乗組員に襲い掛かるべきでしょう。どうせ殺し合いになるのなら相手の歓喜という名の油断を突ける分、ハズレを引いた方が有利まである。いや、クジを引く瞬間に襲った方がより確実かもしれない。



ただ、2人殺さないといけませんから、1人目はスピーディに処理する必要があります。手間取ってると他の2人に背後からやられる可能性が高まりますからね。とはいえ仮に1人目をうまいこと瞬殺したとしても、その後はどのみち1対2になってしまいます。なので先に誰を狙うかは参加者全員の性格や戦力を深く考慮する必要があり、意外と戦略性の高いゲームと言えるでしょう。まあこの映画ではそんなことしないんですが。



「クジ引けよ!」

「引きたくない!」

「じゃあアイツ独身だから殺そうぜ!」

「何言ってるのあんた!」

「ジャンケン3回勝負だ!!」


などとウダウダ揉めた末にもうどうでもいいやとばかりに迎えるヤケクソなオチも嫌いじゃない。本作では「絶対死にたくないけど自分の手を汚すのも無理!」というごく普通の人しか出てこないので、あれくらいグダグダになる方がむしろリアルだとも思えますしね。私がそこにいたとしても似たような末路を迎えるような気がします。エンドクレジットの珍妙なBGMといい、短いながらもわりと印象に残る作品でした。





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