概要
原題:THE SUBSTANCE
製作:2024年フランス・イギリス・アメリカ
配給:ギャガ
監督:コラリー・ファルジャ
出演:デミ・ムーア/マーガレット・クアリー/デニス・クエイド
元トップ女優のエリザベスは、年齢を理由にエクササイズ番組の仕事を失ってしまう。もう自分に需要はないのかと失意のどん底に陥ったエリザベスだったが、とある再生医療の勧誘を受ける。それは細胞分裂の促進により、もうひとりの若い分身を産み出すというものだった。
予告編
感想
こいつはものすごい悪趣味グチャドロ映画だぞ!とホラーファンをいつになく騒がせている作品。だけど宣伝やポスターはすごくオシャレな雰囲気で偏差値は高そうだし、カンヌやらアカデミー賞やらで賞も獲ってるし、何だかんだ言って真面目で高尚な映画なんじゃないの?
などと疑いながら劇場へ行ってみたわけですが、すいません。これはホラーファン大歓喜、脳天直撃グチャドロホラーの傑作でした。劇場であそこまでやりたい放題阿鼻叫喚の地獄絵図を見せられるとは…もう満面の笑みが30分くらい止まりませんでしたね。10年に1本あるかないかぐらいの壮絶なインパクト。しかしよくこんな悪趣味極まりないやつが賞レースに絡んでいったもんだなあ。
とはいえ、序盤中盤と確かに芸術性の高い映像ばかりで構成されています。掃除機をかけるシーンひとつとっても何だかカッコイイのです。エイジズムとルッキズムというテーマも相まって、非常に高尚な社会派映画を観ているような気分にさせられます。ダラダラ時間を稼ぐような無駄なシーンは一切なく、2時間22分という尺をまるで長いと感じさせません。
エリザベスの「年をくって干される現実に耐えられない!」という気持ちは多少わからんでもないものの、もう充分すぎるほどカネは持ってるんだからあとはのんびりすればいいじゃないのよとしか思えない。私が男だからっていうのもありますが、同情も感情移入もあまりできないタイプの主人公でした。
それで若返った自分の分身を作ったはいいものの、本体と分身が同時に活動することはできず、7日間おきに交代しなくてはいけない。しかし、若い方はすぐにテレビ界でモテモテのトップスターに成り上がってしまったので7日間も眠ってらんねえやとルールを破り、やがてとんでもない事態を引き起こす。
というストーリーの流れ自体は意外と予想しやすい感じなんですが、ディテールはユニークかつその映像が予想を遥かに超えるインパクト。まず分身を産み出すなんて大それた若返り方法なんだからさぞかし腕のいい闇医者が懇切丁寧に施術すんのかなと思ってたら驚きの全工程セルフサービス。複雑な手順に従って、あれを注射して、これを点滴して、脊髄からあれを抜き取って、派手な裂け目はあれで縫い合わせて…とやたら痛々しくてそれだけで非常にスリリング。こんなに執拗に注射しまくる映画も珍しい。
私にはあの分身は産み出せないであろう自信がありますね。どっかの手順というか注射でしくじって分裂がバグり、いきなり哀しきグチャドロモンスターが産まれてしまう可能性が非常に高い。そう考えるとエリザベスは注射も縫合も部屋の改造も簡単にこなすし、凝った料理も色々作れるしで相当に器用で有能な人材と見えます。アホみたいなエクササイズ番組に執着する必要が全く無い。
それだけ若くて美しい女性をもてはやす価値観は厄介なんですね。それが行き過ぎれば、若くなくなった女性には何の価値もないことになってしまう。自分で自分を否定する羽目になりますからね。しかしスーとエリザベスの間で決定的な亀裂が入るワード
「〇ュ〇〇ッ〇・エクササイズ!?」
には笑っちゃいましたよ。悲しいシーンなのに。
だから、人間ほんとうに大事なのは内面なんだよ……
……
…
…
みたいな方向へ持っていくのが普通だと思われますが、本作のクライマックスはそんな当たり前の流れは何もかも勢いよくぶん投げてただただグログロゲロンチョ血の噴水ドバドバ地獄へと邁進してくれます。アレはたとえ内面が良くてもアウツですわ。前半であれだけの偏差値の高さを見せつけておきながら、終盤でこのタガの外れ方は凄すぎて笑うしかない。いや~最高に笑えて面白かった。まさか令和の今、劇場でヘネンロッターのアレみたいな哀しきモンスターを拝めるとは思いませんでした。
デミ・ムーアは確かにアカデミー主演女優賞モノのエグイ演技でした。
本当にあげちゃえば良かったのに。
コメント
これは普通じゃない面白さなので気になったらぜひ劇場で観てほしいですね!
公開してからグロいとも聞いてて、友達がストーリーは面白そうだから多少グロくてもいいと言っていたんだけどそんなにグロい?
ちなみに友達と最近観たのはウィキッド。
私の最近のグロ耐性はアマプラでファイトクラブ見て気分悪くなるレベル
私はウィキッドもファイトクラブも見た事がないので比較はできませんが、
この映画がそれらよりも圧倒的にグロイのは確実と思われます。
とはいえ痛々しい系のグロは脊髄注射のシーンくらいで、
クライマックスはどちらかと言えば笑っちゃう系のグロなので、
そういう意味ではそんなにビビらなくてもいいかな?とは思いますね。