「サスカッチ・サンセット」 感想 未確認生物を確認せよ

概要

原題:Sasquatch Sunset

製作:2024年アメリカ

配給:アルバトロス

監督:デビッド・ゼルナー/ネイサン・ゼルナー

出演:ジェシー・アイゼンバーグ/ライリー・キーオ/ネイサン・ゼルナー/クリストフ・ゼイジャック=デネフ


北米の霧深い森に4頭のサスカッチがウホウホと生息していた。


予告編

感想



サスカッチの生態をリアルなドキュメンタリータッチ?で描いた全編セリフなしの超異色作。

貸し切り状態の劇場で観てきました。



いくら伝説のUMAサスカッチとはいえ、その実態はゴリラやオランウータンよりはちょっと人間に近いかな程度の類人猿。言ってしまえばそんなのが森であれこれ食ったり寝たり交尾したりしながらひたすらウホウホ言ってるだけの内容。「2001年宇宙の旅」の冒頭でゴリラだかサルがウホウホ生活しているくだりを思い出しました。あれも長いなと思ったけど、こっちはそんなウホウホ映像を1時間半もみっちり見せようというのだからたまらない。これはよほどのUMAマニアか好事家でなければわざわざ劇場までは観に来ないと考えられます。よくシネコンで上映できたな。



しかもこのサスカッチファミリー、野生動物なのだから当然と言えば当然なんだろうけどそれにしてもやたらとキタナイです。ハナクソほじった指をナメるわ、股間をスリスリした指の匂いを嗅ぎまくるわ、すぐうんこしっこするわゲロ吐くわと大自然の美しさと対比するかのようにサスカッチを汚物にまみれたエンガチョ生物として描きます。スカンクの匂いまで積極的に嗅ぎに行ってたのでどうやら臭いものが好きらしい。ビッグフットにそんな習性があったとは…。こいつらには森で遭遇しても触られたくないから逃げたい。



しかし、そんな悪臭ゴリラ共の日常生活が案外面白い。亀にベロを噛まれるシーンはコントみたいで笑ってしまうし、セリフなしとはいえ別にストイックな映画でも何でもなくかなりふざけた笑いを取りにきてくれます。ただバカなだけではなく、うっかり毒キノコを食べてゲボ吐きながらフラフラ歩いていたサスカッチがピューマと遭遇するくだりは食うか喰われるかの緊張感が漂っており、ストーリーなどないに等しいのにしっかり緩急も効いています。ただ、どうせならサスカッチとピューマの闘いもしっかり映してくれればもっと良かったんですが。あと、ピューマにあまり変な物を喰わせないでやって…。



サスカッチの食事は主に木の実や魚で、森の動物たちは食べずに愛でることが多いようです。おかげでヤマアラシ、アナグマ、スカンクなどの可愛さを安心して堪能することができます。ニワトリを捕まえた時はさすがに喰われるのかな…と心配しましたが、そんなことはなくホッとしました。と思って油断したらニワトリでとんでもない危険な遊びを始めて血の気が引きましたが。あそこだけは下手なホラー映画より怖くてドキドキした…。



野生のサスカッチを通じて現代人の病理を抉り出す…みたいな変な説教臭さがあったらイヤだなと思ってましたが、そんなものはほぼ感じられずひたすらウホウホしているだけ。にも関わらず、終盤ではなぜか少し感動させられてしまうから不思議です。人には勧めにくい映画でしたが、こんな珍作を劇場で目撃すること自体がリアルビッグフットを目撃するに等しいレア体験とも言えるのでやはり好事家は観に行っておくべきではないかなと思います。



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