「呪術召喚/カンディシャ」 感想 モロッコのパワー系妖女伝説

概要

原題:KANDISHA

製作:2020年フランス

発売:ハピネット・メディアマーケティング

監督:ジュリアン・モーリー/アレクサンドル・バスティロ

出演:マティルド・ラ・ミュス/サマルカンド・サアディ/スージー・ベンバ


アメリは不良仲間と一緒に廃ビルで遊んでいる時、「カンディシャ」という落書きを発見する。それはモロッコでは知らない者はいないという妖女伝説だった。その帰り道に元カレに襲われたアメリは復讐のためカンディシャ召喚の儀式を行ってしまう。だがカンディシャは元カレ1人に留まらず、6人の男を殺害するまでは止まらないのだった。



予告編

感想




パッケージからは微妙に「呪術廻戦」に便乗したそうな雰囲気を感じるフレンチホラー。


血でゴボウ星を描き、アイシャカンディシャの名前を5回呼ぶと伝説の妖女がやってくる。なんかすごく「キャンディマン」っぽい設定ですが、あれより本作の方が説教臭さがないぶん娯楽ホラー映画としては好きですね。とはいえフランスの貧困移民層の不良女子たちに呼び出されたパワー系妖女が男どもをぶち殺していく、というストーリーには社会派的なメッセージが込められているのであろうとは思います。思いますが、フランスの事情など知らんのでこの感想記事ではそこはスルーします。



で、ホラー映画としては主人公アメリの身に危険が迫るわけではないところが気になります。アメリはしつこくつきまとってくる元カレに暴力を振るわれ、あんなやつ死んじまえとばかりにカンディシャ召喚の儀を行い、翌朝元カレの訃報を知る。元カレはクソ野郎だからどうでもいいけど、カンディシャは親友たちの恋人や兄弟まで無差別に惨殺し始める。



自分が狙われるわけではなく、親しい友人の身内がどんどん殺されていくのは恐怖より居心地の悪さを感じてしまう展開です。本人にその気はなくとも間接的に加害者になっているも同然なうえに自身は安全圏にいるわけで。しかし友人たちからカンディシャのことを責められる…かと思えばそうでもない。恐ろしく心の広い友人たちだなあという印象。



カンディシャについては、殺人者のビジュアルが妖艶な女性というのが意外と目新しく映って良いです。そのうえ呪術的な存在のくせに100%腕力にモノを言わせた物理攻撃で野郎共の肉を引き裂き、骨をバキボキ砕いてくる。普通もうちょっとこう念力みたいな攻撃を仕掛けてくるのが定番なのでこれはこれでまた斬新。男を殺すに連れてよりデカくパワーアップしていくのも面白い。まあ見た目的にはボクシング兄貴を踏み潰したあたりが一番良かったけど。終盤はちょっとバケモノすぎて逆に普通に見えてしまった。監督はフレンチスプラッターでは名の通った人たちなので、かなり痛々しい骨折シーンを見せてもらえます。



ただ、被害者の人物描写が非常に薄味なので、彼らがいくら気の毒な死に様を晒していても別にどうでもいいのがホラーとしてはちょっと痛い。「この人には生き延びてほしい!」と思えるキャラクターに危機が迫ることで初めて観客は恐怖を感じるものだと思うんですよ。アメリの元カレ以外は何の非もない人たちなので気の毒は気の毒なんですけどね。まあ一番気の毒だったのはアメリに殺されたウサギなんですが。

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