「シェラ・デ・コブレの幽霊」 感想 伝説のホラー映画がアマプラに突如降臨

概要

原題:The Ghost of Sierra de cobre

製作:1964(1959?)年アメリカ

配信:ジェミニエンターテイメント

監督:ジョセフ・ステファノ

出演:マーティン・ランドー/ジュディス・アンダーソン/ダイアン・ベイカー


裕福な建築家でありながら心霊探偵としても活動するネルソンの元に、「死んだ母から電話がかかってくるのでなんとかしてほしい」という依頼が入る。それを調べていくうちに、シエラ・デ・コブレという村で起きた殺人事件が関わっていることが分かってくるが…


予告編

感想





今日、アマプラの新着ホラー映画をチェックしていて目を疑いました。1964年(あるいは1959年)にアメリカで公開予定だったのに、あまりに恐ろしすぎて試写会で失神者が続出したため上映中止、日本では一度だけテレビ放送されたっきりで「幻のホラー映画」として長らくホラーマニアの間で語り継がれてきた「シェラ・デ・コブレの幽霊」が!あろうことかプライム会員無料で配信されているじゃないですか! 



これは衝撃的な大事件なんですよ。なんせソフト化は一切されていなかったうえに現存するフィルムは世界中でもたった2本だけという超絶激レア映画。食べ物で例えると「蚊の目玉のスープ」ぐらい珍しくて好奇心をそそる謎めいた存在。ただそのフィルムのうち1本は日本人が所有しており、2010年頃に関東の方で上映イベントが催されてまして、その参加者たちに羨望の眼差しを向けていた覚えがあります。とはいえ関東なんて遠くて行けない田舎者にとって本作はもはや都市伝説も同然であり、正直一生観ることはないだろうなと思っていました。



ま、今調べたら2018年にアメリカでブルーレイが発売されていたみたいなんですがね。知らなかったそんなの…。それならそれで日本でもブルーレイで発売すればたとえ1万円でも飛ぶように売れまくってボロ儲けできるはずなのに、いきなりプライム会員無料で配信してしまうとは一体どういうことなんでしょうか? 慈善事業か何かなの??



…とはいえ、約60年前に作られたホラー映画ですから、今まで散々強烈で過激な進化を遂げてきた新しいホラー映画を浴びるように観てきた令和の民に改めてトラウマを植え付けるほどの神通力はないでしょう。だからこそ「幻のホラー映画」のままで終わっていた方がロマンがあったような気はしなくもない。



ということで興奮はしつつも全然期待はせずに鑑賞してみたわけですが、意外にもサスペンス・スリラーとして普通にけっこう面白い。建築家のかたわら副業で心霊悩み相談をやっているネルソンが「死んだ母親から電話がかかってくる」怪現象を調査する話。表面上は超常現象だけど、裏では心霊を装った何者かの企みがありそうな雰囲気。



「恐ろしいのは幽霊より人間の心」「幽霊を信じるのはロマンチストと幼稚な大人と、殺人者だけ」。そんな風に言われると、やはり心霊ホラーではなくサスペンスとしての色合いが濃く感じられます。もちろん幽霊がいないわけではないのですが、背景には未解決の殺人事件が存在し、そのいきさつや動機などが現代ではちょっと考えにくい内容のものとなっていて先が読めず逆に新鮮に感じます。



あと気になったのが、どうも本作はもともと映画ではなくテレビシリーズの1話目として作られたらしく、唐突に今後の布石みたいなのを打ってきておいて完全放置したまま終わるという非常に不自然なところが残ってたりします。映画として編集するのであればあの女性をお化け屋敷に誘うシーンはカットした方が良かったのではないか。まだ何かあるのかと思っちゃったよ。



肝心の恐怖演出の方は、確かに1950~60年代の観客であれば失神してもおかしくないほど強烈なものだったんだろうなあ…という納得感はあります。足のない日本的な幽霊が迫って来る映像はアメリカ映画としてはかなり異質なムード。今見てもそこまで怖がれるレベルのもんではないもののインパクトは充分あったし、観ることは叶わないと諦めていた幻の映画を堪能できて実に幸せでした。


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