「キャンディマン(2021)」 感想 黒人差別許すまじ

概要

原題:CANDYMAN

製作:2021年アメリカ

配給:東宝東和

監督:ニア・ダコスタ

出演:ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世/テヨナ・パリス/ネイサン・スチュワート=ジャレット/コールマン・ドミンゴ/トニー・トッド


駆け出し画家のアンソニーは恋人のコネで展覧会の出展が決まっていたが、なかなか作品を創ることができないでいた。そんな時、自分の住む土地には過去にカブリーニ・グリーンというスラム団地があり、そこで都市伝説にまつわる凄惨な事件があったことを知る。それは鏡の前で「キャンディマン」と5回唱えると鏡の中から右手が鉤爪の男が殺しにやってくるというもので、アンソニーはそれを元に作品を創り上げるが…


予告編

感想



1992年のホラー映画「キャンディマン」のリメイク…かと思ったらどうやら続編でした。92年版を観たのはもう20年以上前、まだ10代の頃だったのであんまり覚えていません。確か、単純にグロ怖いスラッシャーホラーを期待して借りてきたら案外ややこしい話でキャンディマンもただの殺人鬼ではなく、おまけに一体何がキャンディなのか名前の由来すら分からず、大して面白いとは思えませんでした。主人公の白人女性が治安の悪そうな団地で悲惨な目に遭わされた揚げ句、たき火で焼かれてたようなぼんやりした記憶があるだけです。



本作はそれから30年後、治安の悪いカブリーニ・グリーン公営住宅が取り壊されて高級住宅地と化し、かつての悲惨な歴史はすっかり覆い隠されて久しくなったところから始まります。その過程で、1作目でキャンディマンの都市伝説を追って死んだ白人女性ヘレンの話もまた都市伝説の一つとして語り継がれてきたという設定。1作目のことをろくに覚えていない私のような観客にもちゃんと復習させてくれる親切設計でした。



駆け出し画家のアンソニーは、創作の題材にするためにキャンディマンについて調べていくうちに狂気の世界に取り込まれていく。本作のキャンディマンは浮浪者のアメ配りおじさんであり、長年の謎だった名前の由来がやっと明らかになりました。カミソリが仕込まれたアメが出回っていたことから警察に目を付けられ、無実なのに無残に殺されてしまった黒人男性の怨念。



オリジナルもそうだったとは思いますが、本作はそれ以上に「黒人差別は絶対に許さん」という怒りに満ちた主張をストレートにぶつけられます。特に白人警官に対する憎悪はちょっと引くほどのものがあり、ブラック・ライブズ・マターなど近年の世相を色濃く反映しているのかなと思いました。単純な見世物スラッシャーとは全く違う、「社会派スラッシャー」という唯一無二のポジションを確立したシリーズと言えます。



ただ、確かに白人警官の理不尽な暴力で殺された黒人の悲劇には遠く離れた日本でも憤りを感じていたのですが、その後のあまりに過激なBLM活動もどうかとは思ったんですよね。暴動や略奪の被害に遭っていたのは差別主義者だけではなかったし、ただ道を歩いていただけの白人を黒人がいきなり殴りつける通り魔的な動画なんかもけっこう目にしました。差別から分断、対立に発展しているようで、そんな中ここまで一方的な目線で映画を出すのは果たして本当に良いことなのか。テーマを娯楽に乗せて浸透させるのは普通のことですが、エンドロールの最後の一文は娯楽映画の領分を越えて直接的すぎたのではないかと。まあそこらへんの温度感は所詮日本の地方都市にずっと引っ込んでるような平和ボケしたカッペには分からないんですけどね。当の白人がこれを観てどういう感想を持つものなのかは気になりますね。




なんだかいつになく面倒な感想文を書いてしまいましたが、正直劇場では眠さをこらえるのに必死で、しかしその甲斐なく中盤30分ぐらいは眠ってしまいました。いや、決してつまらなかったわけではなくとても面白かったので何としても寝たくなかったのですが、なんせ土曜日でも朝7時から忙しく仕事していたので22時過ぎスタートのレイトショーはちと無謀でした。レンタルが始まったらもう一度ちゃんと見直しておこうかなと思います。


コメント