「アミューズメント・パーク」 感想 将来こうはなりたくないが…

概要

原題:The Amusement Park

製作:1973年アメリカ

発売:キングレコード

監督:ジョージ・A・ロメロ

出演:リンカーン・マーゼル


遊園地で老人が罵られ、大変な目にあう。

(↑キングレコードHPより)


予告編

感想





教会が反高齢者差別・虐待をテーマにした教育映画の製作をロメロに依頼したものの、出来上がったブツは少々エッジが効き過ぎていたためお蔵入りとなり、昨年になってようやく掘り起こされたという曰くつきの作品。



教育映画ってことで娯楽性は全く何もなく、当時のアメリカ社会を遊園地になぞらえ、そこで楽しもうとした老人をひたすら無慈悲に虐待する…というだけの実にストレートな内容。尺は53分とかなり短め。70年代のアメリカと現代日本は全然違うはずなのに、高齢者問題については大して変わらないように感じられるから不思議。高齢者は免許返納しろよ!と怒られるくだりは特にそう。日本だとここ数年で言われるようになったと感じてたので。



「カネを持ってない老人はさっさとシネ!」と言わんばかりの乾き切った冷たさが前面に出ており、観ていて誰もがゲンナリすること間違いなし。物理的に痛めつけるだけでなく、見世物にされたり、誰にも相手にされず幼児にすら冷たくされたり、そのうえ死神の姿はチラつくわとメンタル的な追い込みも容赦ない。救いも希望も温もりも一切ない。教育映画と言うからには「あなたも将来こんな目に遭いたくなければ、老人にやさしくして世の中を変えていきましょう」みたいなメッセージを込めるはずだろうし、実際ロメロ監督にもそういう意図がなくもなかっただろうと思いますが、全然そんな風に見えないところが凄い。



「あんたもいずれこうなるんだよ…」と言わんばかりにこんな心をえぐる映像を見せられたら、世の中をより良く変えようなんて方向ではなく「なんとか老後を悠々自適に暮らせるだけの資産を築かなければ…!!」「それが無理なら65歳ぐらいで安楽死しようかな」とか思ってしまうのではないでしょうか。いや、私は前々から漠然とそんな風に考えていましたが、よけいにそんな思いが強くなりました。教育映画としてはお蔵入りにされても無理はない。



日本はアメリカと違って少子高齢化が著しすぎるのでなおさら悪い。私の世代は年金だけじゃとても逃げきれませんからねえ。株式投資で何とかそれなりの資産を築きたいと考えてはいますが、現政権の「新しい資本主義」とやらを聞いていると暗澹たる気分になってきます。もうね、将来に対しては閉塞感しかないんですよね。それでも何か希望があるとすれば、人口が減少しても生活レベルを維持できるほどテクノロジーが進歩してくれないかな…ってことぐらいですかね。


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