「ドライブラッド」 感想(ネタバレあり) オチの見せ方が秀逸な薬物乱用防止啓発ホラー

概要

原題:Dry Blood
製作:2019年アメリカ
発売:プルーク
監督:ケルトン・ジョーンズ
出演:クリント・カーニー/ジェイミー・バレンタイン/ケルトン・ジョーンズ/グラハム・シェルドン/リン・エーラーズ/ロバート・ガルッツォ

薬物中毒者のブライアンはクスリを断つため、田舎の山荘に籠ることにした。女友達のアンに協力を頼み、今度こそは必ず薬物を断つ決意だった。しかし、地元の保安官に嫌がらせを受け、ストレスを感じたブライアンは離脱症状から尋常ではない幻覚に苦しんでしまう。

予告




感想

有限会社プルークからのゲオ先行レンタル作品。

かつてはゲオ先行と言えば駄作の代名詞のようなイメージでしたが、最近は「ブック・オブ・モンスターズ」や「バイオ・エスケープ」など、低予算ながらも良作と呼べるクオリティの作品を丁寧に選別してから発掘してきてくれるようになりました。いまやプルークのゲオ先行レンタルと言えばハズレなしという信頼感を築きつつあると言ってもいいでしょう(多分)。

と言うことで今日はこれを借りてみたのですが、結論から言えば本作もなかなかの良作でした。しかしクセが強く、万人受けはしづらいかも…


内容は薬物中毒者ブライアンがクスリを断つため女友達アナの助けを得て田舎の山荘に籠る。しかし女性のミイラとか首なし少女といった恐ろしい幻覚に苦しめられ、そのうえ保安官にネチネチと絡まれてストレスを感じているうちにブライアンの症状は悪化していき…


というもので、一見よくある「幻覚で脅かすだけのホラー」のように見えるんです。
私は幻覚ばかりで実体のないホラーが嫌いなので、ダラダラ幻覚を垂れ流すだけの序盤~中盤の流れにはウンザリさせられました。

ですが、終盤になってそれが一変します。






※※※※※※※※※※
※※以下ネタバレ※※
※※※※※※※※※※













色々あってブチ切れたブライアンは保安官を撃ち殺してしまい、さらに風呂場でアナの死体を発見。彼女も自分が殺してしまったのか?と血まみれで錯乱していると、今度は折悪く山荘の本来の持ち主である元妻と再婚相手と子供の一家が遊びにやってきてしまう。鉢合わせたブライアンは彼らと激しい争いになって全員殺害してしまう…

と、それまでの大人しい幻覚ホラーからいきなり5人も血祭りに上げてしまうスプラッターカーニバルに発展するのです。結構強烈なグロです。

しかしそれも夢か幻か、気が付いたらブライアンは車で寝ており、これからまた薬を断つため山荘に籠ろうとするのであった。おしまい。




ボンヤリ観てると何が何だかという感じですが、本作は「ブライアンがこれまで何度も山荘に籠っては結局薬断ちに失敗し続けている」という話。


そして中盤で彼が見ていた「ミイラ女」や「首なし少女」の幻覚は、明らかに終盤で殺した人物たちの成れの果てです。つまり本作は時系列がかなりいじられていたと分かります。ブライアンは最後にまとめて5人を葬ったのではなく、3回に分けてやらかしたというわけですね。


包丁に付着していた嫌な汚れ、床に落ちていたリボンなどを考えると、最初の犠牲者は元妻の一家3人。その次にアナ、最後に保安官という順序か。
正直言って中盤までは深い意味は無いと思ってあんまり真剣に観てませんでしたが、それでもいくらかの伏線に思い当たります。

単なる支離滅裂なダメ男の錯乱幻覚ホラーか…とあなどっていると、実は複雑で用意周到なミステリーだったと映像だけで分からせる。こういう秀逸なサプライズを得られることはメジャー作品でもなかなかありません。油断していた分もあってかなり感心しました。低予算映画漁りはこれがあるからやめられない。


ということで、本作は超低予算ながらもかなり凝った仕掛けで楽しませてくれる良作でした。


コメント