概要
製作:2021年日本
発売:HumanPictures
監督:寺西一浩
出演:寺西優真
東京で100年続く老舗の和菓子屋「きしだ」。その三代目は五人兄弟の三男・龍太郎で、今やいつ潰れてもおかしくない「きしだ」を何とか盛り返そうと日々頑張っていた。そんなある日、長男の一郎が結婚することに。だが親族が集まった結婚式の当日になって急にドタキャンすると言い出し…
予告編
感想
最近、寺西作品の想像を超えたクオリティにハマっております。
と言っても一人で観るのは絶対ムリなので、lettuce702の鑑賞会で観てます。それでも1時間×全10話のドラマなので一気見はできないだろうし、1度に2話ずつくらい消化できればいいかな? 程度に考えていました。
すると、これまで以上の超トンデモな内容に驚愕。この狂気がどこまでエスカレートするのか目を離せなくなり、結局徹夜で一気見してしまいました。
と言っても、パッと見の雰囲気はありふれた人情ドラマの体裁となっています。島倉千代子の同名テーマ曲は当然いい曲だし、オープニングは地上波で流れていても違和感はない。正式タイトルは「寺西一浩ドラマ 人生いろいろ」なので橋田壽賀子ドラマ的なものを狙っているようです。
しかし本編は冒頭からいきなりおかしい。お母さん(長谷直美)が座敷で寝ているお父さんを起こすシーンでいきなり5分以上もかけてきます。
「ねえ!お父さん起きなさいよ!ねえ!ブツブツブツ…
起きなさいよ!ねえ!ブツブツ…」
これだけで5分強。
何という独演会。ある意味掴みはバッチリです。
潰れかけている和菓子屋の社長である龍太郎を中心に、他の兄弟が色んなトラブル(ほぼ女性問題)を持ち込んでくるというのがおおまかな内容。
長男が結婚式当日に新婦とモメてドタキャンする!となるのが第一話ですが、みんな「まあ~しょうがないわねえ」みたいな呑気な反応で、まず正気を持って行かれます。招待客はどうするんだ!?なんて考えてはいけません。四男のヒロユキはわざわざそのためにアメリカから来てますが、気にしてはいけません。
龍太郎は底抜けにお人よしなので、長男にキャンセル料を貸すと言い出します。そのうえで、わざわざ遠方からやってきた伯母さんに「店の宣伝のため」と500万円の借金を申し込む。キャンセル料を肩代わりする余裕があるのに何言ってんだ?とか言ってはいけません。経営が苦しいわりには簡単に従業員を増やすし、何なら家政夫まで雇ってるので本当に苦しいのかよく分からない。ただ、冷蔵庫は無い模様。
経営改善のため、新作の和菓子を開発する龍太郎。しかし、どう目を凝らしても単なるアンコ入のモナカ。それでも食べた人が皆絶賛する様はまるで異世界転生物のようです。たまたまやってきた札幌の歯科医など、開業20周年記念に配ると言って1万個もの大口注文を出してくれる。一体どんな歯医者だよ!手作業で製造が間に合うのか!?など非常に気になる展開でしたが、製造や納品をする描写は一切ございません。
「東京ヌードル」と違って一般のお客さんが買い物に来てくれますが、どいつもこいつも様子がおかしいので一般客とは言えないかもしれません。特に何度もやって来る「ジョニー徳田」の棒読みっぷりは無駄にインパクトがでかい。一周回ってファンになりそうです。
ストーリーや描写に突っ込んでいくと底なし沼なのでこの辺にしておいて、いよいよ本作の「本質的にヤバイところ」に触れていきます。何がそんなにヤバイかというと、尋常ではない「尺稼ぎ」です。
本作は1時間ドラマなのでCM分を抜くと1話46分になっていますが、第1話以外の本編は実質的に10~20分程度しかありません。
それで本編以外の何で尺を稼ぐのかというと、
「前回のあらすじ」
「次回予告」
「登場人物紹介」
「出演者の挨拶」
これらがマジで驚くほど
異様に長い。
ちなみに9話と最終話ではかなり長尺の
「1話から前回までのダイジェスト」
も入ってきます。
9話で一旦全部振り返ったのに最終話でまたやり始めた時はもう笑うしかありませんでした。
しかも「登場人物紹介」に至っては「前回までのあらすじ」と内容がモロ被りで、しかもひとりずつやるので同じあらすじを何度もやることになる。
さらに驚くべきことに「登場人物紹介」ではまだ出てきてない未来の人物を紹介する回もあり、その場合は次回予告と内容がモロ被りという斬新さ。給料の前借りに通じるその場しのぎ精神を感じますが、驚くべきことに2話も先の映像を前借りしてくることもある。
ただでさえクソ長い次回予告で次回の内容がほぼ全て分かってしまうのに、そんなことまでされてしまうと、
「初めて見る話なのに
すでに何度も見たことある内容」
というおそらく人類史上初の異常事態が発生します。
さらにそれをその次の回で「前回のあらすじ」「登場人物紹介」でまたリピートされるので、このドラマは同じシーンを全て最低4回ずつは見せられている感覚。もはや尺稼ぎを通り越して実質タイムループ物と言っても過言ではない。
特にひどいのがヒロユキが龍太郎からの借金を踏み倒そうとするシーンで、ここはなんと
計7回
もリピートされてます。どんだけ衝撃シーンのつもりなのか。7回目はもはや「すげえ!!」「マジかよ!!?」と歓声が上がるほどのインパクトでした。なんというエンドレスセブン。
クソ映画を観た時に「これは拷問に使える」と表現することがありますが、本作はわりと冗談抜きで精神的拷問に転用可能な逸材と言えます。関東ローカルとはいえ本当にこれを地上波で流したのか。地上波で流すよりCIAに売った方が良いと考えられる。
本作を早送り無しで全話一気見した人間は私とlettuce702店長しかこの世に存在しない可能性が極めて高い。誰か追随してくれないかな。正直言って好事家的には非常にエキサイティングで楽しい体験でしたからね。DVD買うか悩むくらいにはね。
ちなみに、本作にはあろうことか劇場版も存在します。というかドラマ版の存在を無視して先に観てしまったのですが、時系列的にはドラマの後日談。こちらはなぜか和菓子屋の店舗を捨ててマンションの一室に移転しており、どんな営業形態だか全く分からんうえに話の主軸がダンスに移行している。さらに謎が謎を呼びまくる奇妙な展開となっておりバッドトリップ必至の怪作です。
さらに、毒を食らわば皿まで精神で原作小説まで読破してしまいましたが、内容はほぼ一緒なもののこちらはループしてない分だけ比較的マトモでした。
「寺西一浩ドラマ 人生いろいろ」(Amazon Prime Video)
「劇場版 人生いろいろ」(Amazon Prime Video)
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