「マンディブル 2人の男と巨大なハエ」 感想 ハエは人に懐くか

概要

原題:Mandibules

製作:2020年フランス

配信:わからん

監督:カンタン・デュピュー

出演:ダビ・マルセ/グレゴワール・ルディッグ/アデル・エグザルコプロス


カバン運びの仕事を受けたマヌは、親友のジャンを誘い盗んだ車で走り出す。だが、その車のトランクには巨大なハエがしまってあった。彼らはハエに芸を仕込んでカネもうけしようと企むが…


予告編

感想




頭のおかしいコメディにかけては右に出る者がいないカンタン・デュピュー監督の2020年作品。いつの間にかアマプラでひっそり配信されていました。危うく見逃すところだった。



内容は、ものすごい場当たり的に生きている男2人組が軽く非合法の仕事?を受けようとしたら巨大なハエと出会ってしまい、仕事そっちのけでハエのしつけに熱中するという話。



さすが異次元の奇才カンタン・デュピュー監督、恐ろしいほどユニークです。映画に出てくるハエといったらまず間違いなくおぞましいもの、気色悪いものとして表現されますが、本作のハエはむしろかわええっていう。デカいハエがかわいい。そんな未知の感情を湧かせてくれた時点でもう私の負けですよ。ハエを可愛がる人間も初めて見たし。それも大してデフォルメされてるわけでもなくリアル系の造形なのにね。本作はおそらくハエをかわいく表現した人類初の創作物と言えるでしょう。



私はあの巨大ハエはたぶん手作りの人形だと思うんですがCGだと言ってる人もおり、どっちだか分からなくなるほどクオリティは高い。かつてハエにここまで力を注いだ映画があったでしょうか。そんなでかいハエが初っ端から布団にくるまってイビキをかく絵面がアホらしくも微笑ましくてたまらない。というか「ハエのイビキがうるさくて眠れない」という奇怪な状況も初めて見させていただきました。



そんな巨大ハエに「ドミニク」などと名づけたうえ、芸を仕込んで金儲けまでしようとするだけあって主役のマヌとジャンも相当ボケた味わいを醸しています。ユニコーン型自転車を漕ぐ姿のインパクトは巨大ハエにも決して負けていない…どころかむしろ勝ってる感すらある。彼らを旧友だと勘違いして家に招いてしまう人たちも色々とかなりアレ。ちょっとブラックな描写もあるので眉をひそめる良識派の方もいるかとは思いますが、あのテキトーな生き様はうらやましくなってきます。あれだけいいかげんに生きてても何とかなる世の中であってほしい。



彼らの生き方通り場当たり的な展開で型にはまらない話運びは予測ができなさすぎて面白い。あれだけ自由な精神を持ってみたい。おかしな人たちが誰にもツッコまれることなくおかしな人たちのまま突っ走り、何事もなく完走する。ハエである意味もなさそうだし、全体的に何の意味もなさそうなところが良い。ゆるいばかりで特に盛り上がりどころもないかと思いきやハエの飛翔で爆笑、からのラストでまた大笑い。素晴らしい。トロ!



「マンディブル 2人の男と巨大なハエ」(Amazon Prime Video)



↓カンタン・デュピュー監督過去作の感想

「ディアスキン 鹿革の殺人鬼」

「地下室のヘンな穴」

「ラバー」


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