「ブラック・デーモン 絶体絶命」 感想 悪魔鮫 vs エクソンモービル

概要

原題:The Black Demon

製作:2023年アメリカ

配給:松竹

監督:エイドリアン・グランバーグ

出演:ジョシュ・ルーカス/フェルナンダ・ウレホラ/フリオ・セサール・セディージョ/ビーナス・アリエル


自らの手掛けた石油リグの視察を兼ねてメキシコへバカンスにやってきたポールとその家族。だが町は見る影もなく荒んでおり、海の男たちは何かに怯えていた。石油リグにもなぜか人気はなく、現地人の職員2名がいるのみであった。そんな中、ポールたちにアステカの伝説の超巨大メガロドン「ブラック・デーモン」が襲い掛かる。


予告編

感想





今世紀最大の話題作である「MEG ザ・モンスターズ2」の前座といった雰囲気で公開された新作サメ(メガロドン)映画。公開初日の夜に観に行ったのにガラガラだったけど大丈夫でしょうか。内容はともかく全国公開してくれたことには大感謝です。内容はともかく。



監督は「ランボー ラスト・ブラッド」のエイドリアン・グランバーグ。



私は「ラスト・ブラッド」自体はそこまで面白いとは思わなかったものの、かなりメジャーな作品なので監督としては一流の人材なのでしょう。そんな人がサメ映画業界などという掃き溜めにやって来るとはどういうことか。野球で例えるなら、MLBで好成績を収めた投手が日本の弱小球団に入ってくれたようなものなのです。本来の実力を発揮してくれれば容易に天下が取れるはず。…しかし、これがどうも案外ピリっとしない。いい時もあるものの炎上を繰り返し、気が付けば防御率は6、7点台。本作はそんなような印象の作品でした。



というか、そもそもこれはサメ映画とは言えない。サメの出演時間はトータルで3分くらいだったんじゃないかな。サメの出番が少ないだけならよくあるサメの出ないサメ映画に過ぎませんが、本作の主題はサメとは全く関係ないところにあるのです。ジャンルとしては「社会派オカルトサスペンスサバイバルスリラー」というのが正しく、それにサメがちょっと出てくるヨ程度のものでしかありません。



色んな要素がだいぶ渋滞しており、定番の家族愛で何となく良い感じにまとめようとしているものの、いまいち散漫です。サメの出ない時間は基本的に口論してばかりなので絵面的にもひどく単調。舞台となる石油リグが思った以上にスケールが小さく、展開の広がりを欠いた印象は拭えない。



ただ数少ないサメの襲撃シーンそのものはクオリティが高く、サメの巨大さもあって充分な迫力があります。特にファーストアタックはなかなかしびれました。これがサメの襲撃を主題に置いた本格的サメ映画だったら良かったのになあと思ってしまいます。実にもったいない。



しかし製作側はサメそのものを重視しておらず、あくまで「海を汚す悪の巨大石油企業エクソンモービルに下された神罰」がたまたまサメの姿をしていただけという感じ。だからオカルト的な幻覚攻撃もしてくるし、街の雰囲気や誰も助けに来ない状況もリアリティが薄くて話に乗っていきにくい。



やけにはっきりエクソン(作中ではニクソン)を非難する内容ですが、脱炭素が叫ばれて久しい昨今オイルメジャーも世間の風当たりが強く、すっかり斜陽産業扱いされるようになっています。テーマ的には今さらという気がする。まあここ数年は原油が結構値上がりしたのでかなり儲かっているようではありますがね。私も4年前に仕込んだエクソン株で結構うまい汁を吸わせていただいてますのでねぐへへ(※保有数量35株)



まあエクソン批判も結構ですが、そういう社会的メッセージは前面に出さず、エンタメ要素の影に入れるにとどめておいてほしかったですね。これを観てエクソン株を売り払おうとかガソリン車に乗るのやめようとまでは思わんし。金をとって見せる以上まずは娯楽映画であってほしい。そんな風に思いました。


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