「FALL/フォール」 感想 史上最恐のスリラー

概要

原題:FALL

製作:2022年アメリカ

配給:クロックワークス

監督:スコット・マン

出演:グレース・フルトン/バージニア・ガードナー/ジェフリー・ディーン・モーガン/メイソン・グッディング


ベッキーはクライミング中の事故で夫ダンを亡くし、1年が経過しても立ち直れずにいた。ある時、親友のハンターが立ち直るきっかけにと新しいクライミングの計画を立てる。それは今は使われていない600mもの超高層テレビ塔に登り、ダンの遺骨を撒くというものだった。だが目的を果たした直後、老朽化したハシゴが崩れ降りられなくなってしまう。


予告編

感想





地上600mの高所に取り残された女性二人組の話。


私は高所恐怖症の気があり観覧車にも乗れないのですが、スクリーンで高所を疑似体験する分には大丈夫なのではないか、むしろ人より強い恐怖を安全に味わえてお得なのではないか?

などと考え、さっそく鑑賞して参りました。



が、いや~もうこれは…お得どころの話じゃなかったですね。観ている間ずっと尻の穴がキュッキュッ、嫌な手汗が常時滲み出てくる。全身が硬直し場面によってはスクリーンを直視することもできない!! 手のひらで目を隠して耳を片方塞ぎながら過呼吸に陥りそうになるほどの恐怖を味わいました。これは今まで観た中で最もコワい映画だったと言っても過言ではありません。1時間47分とかなり長めの尺もあって完全にオーバーキル状態でしたよ。寿命が100日くらいは縮んだような気がします。



事前に見た予告編の印象では、またアホなyoutuberが調子に乗りすぎて痛い目に!みたいな軽薄なストーリーを想像していたのですが、本編は全然そんなことなくて意外でした。人間ドラマ的にも実に丁寧。確かにあんな錆びて劣化しまくったテレビ塔にホイホイ登ってしまう時点で途方もないアホとしか思えないのですが、それなりの事情もあるし性格的には良い人たちなのでちゃんと共感・感情移入が出来る。そうでないと没入感がいまいち下がってしまうのでその点はしっかりしていて良かったです。



とは言っても彼女らが塔を登り切った後のはしゃぎ方や派手なパフォーマンスを見るともう頭のネジが飛んでいるというレベルですらなく、まだハシゴが壊れる前なのに「頼む!もうやめてくれ!」と泣いて懇願したくなってしまいます。狭すぎるんですよ!足場が! そこにただ立ってる絵面だけでも怖いってのに、スマホで自撮りしたりドローン操作したりするからたまらない。頼むから柱から手を離すんじゃないよと言いたい。それなのに狭い足場のヘリにぶら下がって一周するとかもうね…観ているだけで気が遠くなる…



ハシゴが壊れて取り残された後はやることなくなってただそこでウダウダしてるだけになってしまうのでは?という懸念もありました。が、そこは色々と趣向が凝らされたトラブルの数々が次から次へと発生するため、停滞感もなく飽きずに怖がることが出来ます。ハゲワシも襲ってくるのでアニマルパニック的なお楽しみもある。ハゲワシおいしいです。夜になっても眠ることすらままならず、とにかく緊張感の持続性が半端ではない。ここまで恐怖の切れ目が全くないスリラーは初めてです。それでいてこの状況に慣れるということも一切ない。場所が場所だけに彼女たちのちょっとした動作ひとつが怖くてたまらないからです。



内容的には「ゼロ・グラビティ」「海底47m」に近いというか亜種と言っていいくらい似通っているのですが、明らかにその二作よりも圧倒的に怖い。人間にとって最も恐ろしいもの、それは真空の宇宙空間でもスペースデブリでも暗い海底でもサメの群れでもなく、ただ高いところだったのだ…。ということを心底思い知らせてくれる素晴らしい作品でした。


コメント

異質な匿名さん さんのコメント…
クソ暑いですね…

やっと観ました、上まで登り切ったあとに107分という長尺に気づきこの後どうすんねんと驚いたんですが最後まで飽きずに観れました、
最後あっさりw
岩石入道 さんの投稿…
>異質な匿名さん

過去最悪の衝撃的猛暑日ですよ…


私も同じこと思ってましたが、色々趣向が凝らされていて良かったですよね。
最後に関しては、まあ主人公が恐怖と過去を克服した時点でやるべきことはやりきってるのであとは省略、ってことでいいんじゃないでしょうか。