「ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス」感想 楽しい死後の世界

概要

原題:Post Mortem

製作:2022年ハンガリー

発売:プレシディオ/ミッドシップ

監督:ピーター・ベルゲンディ

出演:ヴィクトル・クレム/フルジナ・ハイス/ユディット・シェル/ジョルト・アンガー


第一次世界大戦時、重傷を負い臨死体験までしながら生還したトーマスは戦後、遺体写真家として働いていた。ある時、トーマスは謎めいた少女アナに依頼され山奥の小さな村で仕事を始める。戦争やスペイン風邪で亡くなった村人たちが放置されたままのその村では、悪霊による怪奇現象が頻発していたのだ…


予告編

感想





ハンガリー製の心霊ホラー映画。


第一次世界大戦後のハンガリーの田舎が舞台ということで、全体的に寒々しく陰鬱なトーンながらも景色は綺麗でなんとなく格調高い雰囲気に包まれた芸術映画的な作風。



それでいて尺は1時間56分たっぷりあるので途中途中で集中力が途切れてしまい、特に中盤は完全に「ながら見状態」となってしまいました。なので何もわかってない馬鹿みたいな感想を書いてしまうと思いますのでどうかご了承ください。まあ毎度のことかもしれませんが。



内容は、遺体の写真撮影を生業とする男トーマスが謎の少女アナと共に死体だらけの寒村に跋扈する悪霊の群れと対峙するというもの。



本作中、一番怖いのは序盤で遺体写真家トーマスが普通に仕事をしている場面です。土気色の遺体を化粧し正装させ、椅子に座らせて記念写真を撮影する。美術的にも遺体のクオリティも非常に高く、第94回アカデミー賞国際長編映画賞出品も納得のリアリティがあります。



なので、その状況から真面目に心霊ホラーを展開すれば相当怖いシーンが拝めるのでは!?という期待があったのですが、意外にも中盤以降は一気にお笑い方面へスッ飛んでいきました。お前は何をやっているんだ。いや、決してふざけているわけではなく、あくまで真面目にやっているとは思うんですが。西洋人はああいうアグレッシブな悪霊が怖いと感じるのでしょうか。



まずトーマスが寝ている時になぜか空中浮遊しているシュールなシーンを皮切りに村人たちがたびたび空中浮遊するようになってきます。そのまま誘拐されて壁の中に吸い込まれたりするので恐ろしいことは恐ろしいのでしょうが、白昼堂々フワ~ンと空中浮遊するおじさんを追いかけまわす村人たちという構図はお笑い以外の何物でもない。その後も村人たちはアクロバティックにホイホイ浮かび上がり、違う方向にテンションは高まる一方です。



極めつけは納屋に安置しておいた大量の遺体がなぜか集合写真でも撮ってほしそうにみんなでポーズを決めている場面。あんなシャッターチャンスで写真を撮らないトーマスは遺体写真家として無能と言わざるを得ないのではないか。悪霊の怒りを買っても仕方がないと思います。それにしてもあの遺体たちはもはや辛く苦しい生から解放されてポストモーテム(死後)の世界を楽しんでいるかのようでした。心霊ホラーにおいてあんなに愉快な絵面を拝めることもそうそうないと言えるでしょう。



ちょっと長すぎてダレたのと終盤の展開についていけなくて(なんで解決したのかわからない)苦しい面もありましたが、映像的には色々面白かったのでそこはそこそこ楽しめました。


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