「ニューオーダー」 感想 金持ちはクソか

概要

原題:NUEVO ORDEN/NEW ORDER

製作:2020年メキシコ/フランス

発売:クロックワークス

監督:ミシェル・フランコ

出演:ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド/ディエゴ・ボネータ/モニカ・デル・カルメン


富裕層の娘マリアンはその日、自宅で結婚パーティを催し幸せの絶頂にいた。だがそんなこととは関係なく、街では貧富の格差に対する抗議運動が暴動に発展。マリアンの家にも暴徒が押し寄せ、殺戮と略奪の宴が催されることになってしまう。


予告編

感想




夏ごろに札幌でも上映するはずだったのに何やかんやで中止になってしまっていたメキシコの胸糞鬱映画。



白人富裕層の善良な娘マリアンが格差への抗議から発展した暴動に巻き込まれ、私利私欲に走る軍に拉致され蹂躙される様を淡々と描いています。エンタメでもメタファーでもないド直球な内容のため、映画として面白いとか面白くないという尺度では図りにくい感じの作品かと思いました。



画面からはどう考えても何の救いもない辛辣さ、負のパワーが横溢しており、話が進めば進むほどロクなことが起きないのは明白でした。持ち上げて落とす、何らかの希望を持たせる、そんな生ぬるい起伏は存在しないのでスリルを感じることもない。この作品を観て楽しもうなんてことは許されない。近いうちにやってくるであろうこんな悲惨な世界を回避するために何か考えろと言われているように感じました。



まあ、私としても富裕層は大体クソだと思っている…と言ってもベゾスとかマスクのようにビジネスで成功して金持ちになった人は普通にすげえなあと尊敬しているだけです。が、問題は一旦財を成した人物がいるとその財産が代々受け継がれて格差が固定化されてしまうことです。富が滞留してしまうのは実によくない。それにただ親が実力者だったというだけで何も成していない無能、あるいは何か成したとしても最初から有利な立場で出来レースをこなしただけの人間が、使用人をアゴで使うなんてことがあっていいのか。そんな奴らが一般大衆からカネを吸い上げる仕組みを放置していいのか。いや、そんな奴らは身ぐるみ剥いで寒空に叩きだすべきではないか。



…そんな風に思わないでもないんですが、さすがに本作に出てくる富裕層の娘マリアンの悲惨すぎる末路を見ていると「おい、ちょっと待てよ」と言いたくはなる。言いたくはなるけど、この世の政治経済の仕組みを作っているのは富裕層なんだし、貧民がこんな惨劇を起こさない程度には格差の少ない仕組みにしてくれよと思うし、観た人にそう感じさせるための作品だったのかなとも思います。



とはいえここは世界に誇る平和ボケ国家であり、少子高齢化があまりに著しく、労働による活力の搾取も厳しく、暴動を起こすエネルギーもなく老衰するかのようにじわじわと大人しく滅びていくのではないかと考えています。まあそれでも本作で描かれていることをあんまり他人事だと思わない方がいいんだろうし、増税増税言われるとそろそろ誰か暴動起こせよ!と思う時もあるけど、良くも悪くも多分なさそうです。それはそれでツライけど、暴力が全てを支配する世界よりはましだろうな。そんな風に思いました。


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