「アイスロード・キラー」 感想 神は罪人をも愛す

概要

原題:ICE ROAD KILLER

製作:2022年カナダ

配信:A&E Television Networks

監督:マックス・マクガイア

出演:サラ・アレン/ゾーイ・ベルキン/エリカ・アンダーソン


親子水入らずで休暇を過ごそうと車を走らせていたヘレンは、道中で若い女性ヒッチハイカーのカーリーを拾う。だが、カーリーはスキを見て金品を奪う窃盗犯だった。さらに、ヘレンの車を執拗に付け回す怪しいトラックが現れる。


予告編

感想



「アイス・ロード」「ロード・キラー」の良いとこどりを期待したくなるようなタイトルのカナダ製サスペンス劇場。


しかし実際は別にカーチェイスもクラッシュシーンもなく、ただ単に撮影する時と場所を選べなかったために地元の冬道が舞台となっただけのような作品でした。もうちょい「雪道ドライブの悪夢」的な方向でのスリルが欲しかったところ。



とはいえカナダの厳しい冬道で正体不明のサイコなトラック運転手が付きまとってくる内容には変わりなく、型にはまりがちな女性向けテレビサスペンス劇場の中では意欲的なものを感じます。



この手のロードレイジ物は大体主人公がちょっとした煽りなりマナー違反なりをやらかしてサイコ野郎に目を付けられるパターンがほとんどですが、本作の主人公ヘレンには珍しくそういった落ち度が全く何もありません。問題があるのは金品目当てでヒッチハイカーのフリをしている若い女性カーリーを拾ってしまったことで、サイコトラック運転手の目的もそちらにあったという話。



私はヒッチハイカーを拾ったことがないのでいまいちわからんのですが、本作のヘレン・ローラ母娘はやたらカーリーに対して親切すぎて違和感を覚えます。見ず知らずの人なのにわざわざモーテルで一緒の部屋に泊まる、ご飯をおごってあげる、金品の入った荷物を預けて留守番させる…日本人よりよほど平和ボケしているとしか思えない愚行の数々。そういうところも含めてツッコミどころは結構多いです。中盤で警官を呼びに行くシーンは特にアレ。



カーリーは金品窃盗の常習犯で、時にはそれ以上の凶悪犯罪も犯しており、ほとんど同情の余地のないクソ女。…という事実が露見した後も、ヘレンたちはカーリーを見捨てず命をかけて助けようとする。そのあまりに度を越したおせっかいな善人ぶりには宗教じみた怪しさが漂っています。「人を助けるのに理由はいらない」…どっかで聞いたようなセリフだな。



ところがその後は意外と納得感のある展開を見せ、ツッコミどころは無数にあれども心情的にはそこまで悪くはない後味でした。私は色々乱雑でテキトーで投げっぱなしのテレビ映画を見まくっているので、そういう有象無象のジャンク品と比べれば本作はそこそこキッチリしており、真面目に作られているなあと感心してしまいました。


「アイスロード・キラー」(Amazon Prime Video)

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