「ティル・デス」 感想 血も涙もないのに…重い

概要

原題:TILL DEATH

製作:2021年アメリカ

発売:クロックワークス

監督:S・K・デール

出演:ミーガン・フォックス/オーエン・マッケン/カラン・マルヴェイ/ジャック・ロス


お互いに浮気しており、すでに冷え切った夫婦のエマとマーク。何度目かの結婚記念日に、マークは人里離れたレイクハウスでのサプライズ・バカンスを行い、やり直しを提案してくる。だが翌朝エマが目を覚ますとマークと手錠で繋がれており、しかもマークはいきなり拳銃自殺してしまう。エマは外界と遮断された真冬の湖畔で、夫の死体を引きずりながら脱出を試みるが…


予告編

感想





ジャケとあらすじを見て「ジェラルドのゲーム」みたいなやつかな?と思って鑑賞しましたが、旦那の死体の手首と手錠で繋がれているってことで「デス・ホール」(2016年)に近いシチュエーションのスリラーでした。最も「デス・ホール」は本作とは比べようもない全くわけのわからんC級映画でしたが。



宣伝文句では「目覚めたら手錠で繋がれた夫の死体」としっかり書いてあるのに、実際は目覚めた時点ではまだ夫は生きていて、何やら意味深なセリフを吐いてその場で拳銃自殺。もし何も知らずに観ていたら度肝を抜かれるくらいにインパクトのある開幕です。



車は動かず、携帯も使えない。血も涙もないのに重たい夫の屍を抱え、真冬の湖畔から脱出することが出来るのか…というだけでなく、狂暴なサイコ野郎たちが乗り込んできてエマを襲ってくる。どうやらこの夫はよほど周到な嫌がらせ計画を立てて自殺したらしい。クソ重たい夫の屍という絶大なハンデを背負って逃げ切ることが出来るのか!?



類似作がありながらもそれらとは一線を画す過酷で独特な展開が素晴らしい。ただでさえ重くて動きにくいうえにどこへ逃げても痕跡が残ってしまう。特に階段の昇り降りがものすごくキツそう。こんな絶望的なシチュエーションのスリラーもなかなか稀ですよ。前述の「デス・ホール」の主人公は手錠で繋がれた恋人の足首をムシャムシャ食いちぎって切り離していたので、最初は「エマも夫を食いちぎればいいんじゃないかな」などと思いながら観ていたのですが、あんなサイコ野郎に襲ってこられては悠長に咀嚼しているヒマもない。



夫の屍をズルズル引きずりながらのサイコ野郎とのチェイスはこれまでにない新しいスリルを感じます。とはいえさすがに非現実的で笑いを誘うような場面も多々ありましたが、それはそれでまた面白い。ず~っと引きずられてる夫の屍がだんだんシュールに見えてきて、ついに後半でバトンタッチするくだりは吹きました。



なんで夫は自らの死体がひどい扱いを受けることを見越してまでわざわざそんな愉快な自殺を決行したのか…という動機の点に関してはそんなに驚くほどの真相でもなくて若干拍子抜けはしましたが、一風変わったサバイバル・スリラーとしては大変面白かったです。エマとサイコ野郎とのそれはもうしつこいぐらい濃厚な殺し合いは見応えありまくり。二人とも人外レベルのタフさを持っており「これはもう死んだんじゃない?」と思わせてからの復活が何度も繰り返される泥沼の激闘は一見の価値があると言えるでしょう。



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