「レイジング・ファイア」 感想 動体視力を鍛える必要がある

概要

原題:怒火/Raging Fire

製作:2021年香港・中国

配給:ギャガ

監督:ベニー・チャン

出演:ドニー・イェン/ニコラス・ツェー/チン・ラン/ベン・ラム/パトリック・タム/カルロス・チャン/サイモン・ヤム/レイ・ロイ


曲がったことが許せない警官のボンは、上層部の妨害により4年間追い続けた悪党の麻薬取引現場へ踏み込むことができなかった。だが、その現場に謎の集団が乱入し、警官多数を含む十数人が殺傷される。首謀者はかつてのボンの同僚で警察に恨みを持つンゴウだった。


予告編

感想





久しぶりの香港映画。

当ブログとしては珍しくアクション映画3連発ですが、別に私はB級ホラー専門というわけではなく、とにかく生き物が全身全霊で殺し合っている様を観るのが好きなのでジャンル自体は何でもいいのです。とはいえ格闘アクション物は2011年の「ザ・レイド」があまりにも凄すぎて、あれを繰り返し鑑賞するだけで概ね満足出来てしまうので新作はしばらくスルーしてきたんですよね。同僚に「イップ・マン」シリーズを勧められてもスルーしたのでドニー・イェン主演作を観るのも初めてだったりします。



内容は、潔癖で曲がったことが許せない正義の警官ボンと、ほんの少し道を踏み外しただけで酷い目に遭って悪党に墜ちてしまった元警官ンゴウがぶつかり合う話。ストーリー自体はベタで古臭すぎるし、演出的にも仰々しくて重たくて長いと感じました。なんせ2時間6分もありますからね。しかも当初の予定では3時間あったとか。しかし、それが無駄だから削れとは言えない。それだけ丁寧に主役2人の闘いを盛り上げていくために機能はしているし、またクライマックスはそんな仰々しい前振りに充分釣りあうどころかお釣りが来るほど途方もない全身全霊を傾けた殺し合いを観せてもらえて大満足。



それにしても、久しぶりに香港映画を観た身からするとあまりに治安の悪すぎる香港が修羅の国にしか見えない。一応これ現代劇なんですよね? あんな凶悪犯がゾロゾロ蠢いている街でそいつらと毎日切った張ったしている香港警察のメンバーはもうそれだけで超人に見えるし、彼らを率いるボンなどもう明らかに人間を辞めているとしか思えない。



捜査手法も実に前時代的。いや、ボンは人間を辞めているのだからもう何でもアリなのかもしれませんが、怪しいと目を付けた悪党の拠点に単身で乗り込んで片っ端からボコボコにしてしまう。防弾チョッキを腕に巻き付けて防具にするところなんかはうかつにも一瞬「現実的な戦術だな」とか感心してしまいましたが、数十人の猛り狂った悪党どもに一人で立ち向かう時点で全く現実的ではなかった。



そういう感じなので、悪党の1人や2人が打ち所悪く死んでしまっても全くおかしくないように見えるし、悪党の人命も人権も鼻くそレベルにどうでもいい修羅の国での出来事なんだな…と思って観ていたので、もう一人の主役である元警官のンゴウが悪の道に墜ちた理由には驚きました。



だって別に悪党一人うっかり殺してしまったぐらいでまさかちゃんと裁かれてムショ行きになるなんて想像もしないじゃないですか。「それくらい別にいいだろ!何で俺だけこんな目に遭わされるんだ!香港警察許すまじ!」と復讐の怒りに煮え滾っても全く持って無理はない。なんかもうこの時点で著しくンゴウに肩入れしたくなります。ビジュアル的にも死ぬほどカッコイイですしね。おそらく2022年1月現在、世界一カッコイイ男はこの映画のンゴウで、2番目がボンなのではないかと考えられます。



ただ問題は、彼らの動きがあまりにも速すぎて常人にはよく見えないということです。カーチェイスの末にひき殺されそうになった幼児をボンが救った場面はあまりにも人外の動きすぎてスローで確認させてくれないと何が起こったのかさっぱり分からんし、最後の対決における序盤の攻防なども私には認識不可能な領域です。この映画を100%楽しむためには我々観客も武術の修練を積み、それ相応の動体視力を身に付ける必要があると言えるでしょう。私もブルーレイが発売される頃までにはそうしておきたいと思います。


コメント

異質な匿名さん さんのコメント…
香港映画いいですよねえ、昔も現代も設定問わず時折見ちゃいます。
一時期はまりすぎて広東語の勉強はじめましたもん、発音で心折れて辞めましたけど。
キョンシー映画見たことありませんか?
Jing-Fu さんの投稿…
岩石さん、遅れましたが明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします!

目が肥えていると自信を持っている僕でさえ、未だに初見のドニーさん達の動きには置いてけぼりにされます。
本作はアクション特化型ではなく、ドラマもすこぶる高品質だったので、ここに来てドニーさんの現代劇の中でも他を出し抜くバイタリティ溢れる傑作になっていたと思います。早く円盤が欲しい笑

P.S 『イップ・マン』シリーズはガチでお勧めします!
岩石入道 さんの投稿…
>異質な匿名さん

広東語の勉強とは!でも発音は確かに難しそうですね。人名一つとっても「ンゴウ」とか無理やり感ある表記だったし日本語とは全く違いそう。
キョンシー映画は霊幻道士とか見てましたけど、80年代は子供だったのでさすがにあまり覚えてないですね…ファミコンのゲームはよく覚えてるんですけど。「キョンシーズ2」とか。


>ジンフーさん


明けましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。
よく訓練されたマニアですら目で追い切れないほどの超絶アクションでしたよね。しかもドニーさんが58歳と後で知って驚愕しました。還暦近い人間にあんなことができるとは…
これは本当に早く円盤が欲しいですね!繰り返し観たいシーンだらけですよ。
イップマンシリーズもそのうちまとめて観てみようかなと思います。