「パンデミック・エクスプレス 感染無限列車」 感想 ネズミ愛は感じる

概要

原題:狂鼠列車

製作:2021年中国

発売:アルバトロス

監督:リン・ツェンハオ

出演:イン・チャオドー/グレイス・シア/チュウ・イア


衛生署に勤めるスーは、子供たちを連れて北衛府駅発の列車に乗っていた。すると車内で、医学院で学んでいるはずの長女・リンリンに出くわす。スーはリンリンを問い詰めるが、父に反発するリンリンは全く取り合わない。その時、突如車内に大量の鼠が発生し人々に襲い掛かかる。なんとか前方の車両に逃げ込むが、スーの息子ユエションを含む鼠に噛まれた者は、エルシニア感染症という伝染病に感染していた。鼠も伝染病の影響により凶暴化しているらしい。また、鼠によって防衛軍も壊滅していた。スーは、その先にある小白河駅の病院に伝染病の特効薬があることを思い出すがー。

(↑アルバトロスHPより)


予告編

感想





どう考えても誰も騙されるわけがないのに「新感染 ファイナルエクスプレス」「鬼滅の刃 無限列車編」を掛け合わせてしまったアルバトロスの蛮勇が光る中国産アニマルパニック映画。確かに「無限列車編」はあり得ないほどヒットしたので何とか便乗したい気持ちもわかるけども。ちなみに私は無限列車編の映画は未見です。原作の方は1巻が出た時から読んでましたが、まさかあんな途方もない大ヒット作になるとは想像してませんでしたね。



内容は、20世紀初め?頃の中国の北衛府とやらで走っていた列車になぜか狂暴化したネズミ軍団が乗っていて乗客大パニックというもの。



「本作には不快な映像が含まれます」と前置きが入るのでちょっと身構えましたが、不快というのはネズミのことでした。基本CGだしグロもないのでどっかの青ダヌキでもない限りそこまで不快と感じるほどの強烈な映像はないと思われます。


私にとっては「ネズミゾンビ」以来約10年ぶりとなるネズミ映画。しかしこの邦題とジャケ絵でネズミパニックものは想定できないので、もっと正しくアピールすべきだと思うんですよ。邦題は「ウイラード・エクスプレス 地走り無限列車」みたいな感じがいいのではないかと。



で、中国人なら当然分かるよねってことなのか舞台も時代背景も何もかも一切説明がないんですが、私にはそこらへんがよく分かりません。なんでこんなに不親切な仕様なのか。軍人の服装とか山賊みたいな乗客の風体を見るに時代は第一次世界大戦前後あたりかなとは思うものの…



乗客のキャラクターも中国産モンパニ映画でありがちな薄っぺらさで、どいつもこいつもモブに毛が生えた程度の存在感しかない。人間ドラマも投げやりで超テキトー。毎度おなじみ父娘の絆。そんなどうでもいい人たちが悲壮感たっぷりに退場していっても「何だかなあ」というのが正直なところです。



列車でのネズミパニックからスタートし、助けを求めて立ち寄った町はすでに襲われた後で、自分たちで危険な場所に治療薬を取りに行く…という状況設定や話の流れが「蛇王 キング・オブ・スネーク」に酷似しており、ただテンプレートに沿って作っただけのようなやっつけ感が漂います。



ただ、他の要素に比べてネズミの群れが襲ってくるシーンのクオリティだけは異常に高い。ネズミの群れなんてコストがかかりそうな映像をあれだけハイレベルに表現したうえ出し惜しみもなくバンバン出してくるので、本作の監督はネズミにしか興味がなかったのだと思われます。人間なんかどうでもいい、ネズミの群れが撮りたくて撮りたくて仕方がない…そんな歪んだ衝動を解消するために本作の制作に臨んだのでしょう。たまにはそんな変態が居てもいいじゃないか。そんな風に思いました。


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