「呪われた老人の館」 感想 衝撃の老人ホーム・ホラー

概要

原題:The Manor

製作:2021年アメリカ

配信:アマゾンプライムビデオ

監督:アクセル・キャロリン

出演:バーバラ・ハーシー/ブルース・デイヴィソン/ニコラス・アレクサンダー


70歳の誕生日に脳卒中で倒れてしまったジュディス。回復後は古い老人ホームに入居することに。だが、そこでルームメイトが謎のバケモノに襲われているところを目撃。この老人ホームに超自然的な脅威が存在すると思ったジュディスは何とか退去しようとするが、周囲にはボケ老人扱いされてしまう。


予告編

感想





ブラムハウス&アマゾンスタジオ製作のホラー映画。

劇場公開ではなく配信専用となると色々冒険できるのか、「悪魔のビンゴカード」に続いてまたしてもバアさんが主役。それも老人ホームが舞台で老いがテーマとホラー映画にしては地味ながらも珍しい題材。邦題はいくらなんでも渋すぎて面白味に欠ける気がしますけどね。せめて「呪われた老人ホーム」にするとかさ…節操のない配給会社だったら「悪魔の老人ホーム/長寿のいけにえ」ぐらいフカして思わず手に取りたくなるアホな邦題を付けてくれると思うんですよ。



で、内容の方ですが。脳卒中で倒れたのをきっかけに老人ホームへ入居させられてしまった元ダンサーの老人・ジュディスがそこで超自然的な脅威を認識し逃げ出そうとするが、周囲には完全にボケ老人扱いされてしまうという話。



スーパーナチュラルな怪現象に見舞われた時、それを必死で周囲に訴えてもキチガイ扱いされてしまうというのはホラー映画では非常によくあるパターンです。が、主人公が老人なのはたぶん初めて見ました。これが中年以下だったらいくらキチガイじみたことを訴えてもせいぜい相手にされないぐらいで精神病院にまでぶち込まれるのは稀ですが、老人ホームにいる老人がやるとなるとだいぶ話が違ってきます。



「夜な夜な怪物が入居者を襲って殺してるのよ!」なんて主張して退去しようとすればするほどボケ老人扱いされ、ベッドに縛り付けられ薬で眠らされてしまう。本作が上手いと思ったのは、これが至って正当な対応にも見えることです。現実問題ボケ老人の被害妄想をいちいち真面目に受け止めていては介護施設も成り立たんでしょう。脱走まで企てるとなると、多少非人道的に見えてもある程度拘束するのも仕方ないかもしれません。しかし私も将来老いてボケたらああいう扱いを受けるかもしれないと思うと恐ろしい。老人ホームも一見上品なようでいて自由がなく、刑務所とあまり変わらないようにも見えます。



こうして超自然的な脅威が実在するかどうかを曖昧にしつつ、「老いること」の恐ろしさと不自由さをこれでもかと見せつけた末、一見トンデモなクライマックスでズッコケそうになってからの衝撃的すぎる結末には目を見張りました。それもただ奇をてらったわけではなく、それまでの積み重ねを思い返すとああなっても無理はないと思わせる説得力が充分ある。ジュディスの中ではもう「老いへの怖れ」に耐えられないほどの仕打ちを受けてしまった。「周囲にはキチガイ扱いされる」という定番パターンを「老い」というテーマに直結させた手法がうますぎて感動しました。出てくるのはジジババばかりで全体的に地味で暗い映画ですが、プライム会員ならぜひ観ておくべき秀作ではないかと思います。


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