「悪魔のビンゴカード」 感想 ビンゴの悪魔 vs 性悪ばあさん

概要

原題:BINGO HELL

製作:2021年アメリカ

配信:アマゾンプライムビデオ

監督:ジジ・サウル・ゲレーロ

出演:アドリアナ・バラーサ/L・スコット・コードウェル/ジョシュア・ケイレブ・ジョンソン/リチャード・ブレイク


アメリカの田舎町オークスプリングスは近年再開発が著しく、住人の入れ替わりが進みつつあった。昔から町を守ってきたと自負を持つ老人のルピタはそれを不快に思いながらも、町のビンゴホールで仲間たちと集まることを日々の楽しみにしていた。だが、ある日ビンゴホールの支配人が怪しい男に変わり、高額な賞金をエサに住人の隠れた欲望を露わにしていく。


予告編

感想




アマゾンプライムオリジナルの新作ホラー映画。

タイトル的にはバカホラーを期待していたんですが、案外シリアスな寓話的作品でした。


内容は、再開発で住民が入れ替わり高級化が進みつつある田舎町オークスプリングスで、昔から住む老人たちの憩いの場であるビンゴホールに悪魔がやってくるというもの。



引退したアメリカの老人は毎日ビンゴゲームに興じるものというイメージが強くありますが、あれは日本のパチンコをマイルドにしたような遊びなんでしょうね。どっちも特に戦略性もなさそうなただの運ゲーだし、集まってワイワイすること自体が楽しいんだろうなと想像してますが。そんな微妙な遊びであるビンゴゲームをどうホラー映画の題材に反映させたのか非常に興味がありました。ちなみに原題は「BINGO HELL」なので、個人的には邦題も直訳して「ビンゴ地獄」にしてほしかったところです。「悪魔のビンゴカード」だとビンゴカードそのものに何か呪いとか仕掛けが施されているのかな?と思ってしまいますが、別にカードには何もないし。



…しかし、どっちにしろビンゴゲームそのものには特にこれといって面白味のある描写は全く存在しませんでした。あれならくじ引きでもルーレットでも代用可能ですね。ビンゴで負けたら殺されるサバイバルデスゲームでもやるのかなと期待してたので少々拍子抜け。その手の即物的な面白さを求めてはいけない映画です。



ビンゴゲームの勝者には法外に高額な賞金が出るので、欲望に憑りつかれた住民が悪魔に魂を喰われて無惨な死にざまを晒していく。参加費用がいくらか知らんけど、どう考えても赤字なのにそんなビンゴホールが成り立つわけないんだから住民も察しろよ…と突っ込みたくはなりますが、これはそういう話ではないんですよね。だから悪魔の正体も明かされないし、警察もやってこない。



主人公は町の再開発・高級化とそれに伴う住民の入れ替わりに激しく反発している老人ルピタ。とても意固地でタフそうなイジワルばあさんです。初っ端から新しいコーヒーショップに憎悪の目を向け、若者客にわざと体当たりしてコーヒーをこぼさせて「ヒェ~ヘヘヘヘェ~www」と邪悪な笑い声を上げてしまう。年甲斐もなくギャングみたいなバンダナでオシャレしてしまう。ホラー映画でこういうワイルドなキャラクターが主役になることは滅多になく、もうそれだけで面白い。ただ見た目が私の母親に似ていて困る。



しかしもちろんただの性悪ばあさんではなく、心から町を守りたいと考えている人物だからこそカネの魔力に惑わされることなく悪魔に抵抗し、町がカネの力で再開発され住民が入れ替わろうとも本当に大切なものは他にあるのだと気づいていく。年は取ってるけど人生はまだまだ残っている。これはこれでかなり楽しめはしたものの、残念ながらこのメッセージを余すところなく味わうには私は若すぎたし、転居を繰り返しすぎてしまいました。が、生まれ育った田舎町に根を下ろして長年暮らしているような中高年の方にはかなり刺さるものがあるのではないかと思います。

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