「BAD CGI SHARKS / 電脳鮫」 感想 ハリウッドの闇、クソサメ映画界

概要

原題:BAD CGI SHARKS

製作:2019年アメリカ

発売:コンマビジョン

監督:マジャマ

出演:マシュー・エルスワース/ジェイソン・エルスワース/マッテオ・モリナーリ/ジェン・リュー/ジョシュ・スターリング


夢見がちな兄ジェイソンは、子供時代に兄弟で執筆したサメ映画の脚本を携え、仲違いしていた弟マシューのもとを訪ねる。しかしとある不思議な魔法の力で彼らの脚本が現実化してしまい、本当にサメに襲われてしまう事態に。「サメ映画のお約束」が次々と兄弟に降りかかる一方、ネット経由で知能を獲得したサイバー・ジョーズは人類に対する反逆を企てていた…!

(↑コンマビジョン公式HPより)


予告編

感想





サメ映画のメタコメディ…ではなく、純然たる「クソサメ映画」のメタコメディ映画。


俺たちがサメ映画を作ってもクソサメ映画にしかならんだろうし、それなら最初からクソ(CG)サメが襲ってくるネタ映画にしてしまえばいいじゃないか!…というヤケクソ感が非常に好ましい。しかもただ開き直っているだけではなくしっかり「クソサメ映画」への愛があふれているケッ作。まあ私も昔からのクソサメ映画愛好家なのでアレですが、こういうキワモノ中のキワモノとしか言いようのない珍作の登場を心の底から喜ばしく感じる一方で、「何やってんだこいつら…」とか思わないでもない。一体クソサメ映画の何がメリケン共をこれほどまでに駆り立てるんでしょうか?



ストーリーは、幼いころに「サメ上陸」という脚本を書いたバカ兄弟のところにスピルバーグ風(?)の変なオッサンが現れ、魔法のカチンコでバッドCGなサメを具現化。するとそのサメは偏見に満ちた脚本家を一掃し、洗練されたサメ映画を量産するためにバカ兄弟を始末しようと襲ってくるのであった。



というような感じですが、別にストーリーはどうでもいいと言わざるを得ません。幼い子供がサメのおもちゃでガチャガチャ遊んでいるのを微笑ましく眺める…そんなような生温かい気持ちで向き合うべき作品なのです。

しかし、そう油断しているとなかなか深いセリフが出てきて驚かされます。例えば、


「映画に大切なのは結末じゃない。

心に何を残すかだ。

人生と同じだね」


これは映画と人生について端的に表した名言かと思います。ただクソサメ映画が観客の心に何を残してきたのかと言えば、せいぜい


「こんな馬鹿共にサメ映画が作れるなら俺達にも出来るぞ」


という誤った自信を植え付けてきたのが関の山ではないでしょうか。しかしその結果、馬鹿が作ったクソサメ映画を観た馬鹿がさらに馬鹿なクソサメ映画を作り、さらにそれを観た馬鹿がもっと馬鹿なクソサメ映画を(略)と連鎖的にクオリティを下げながら、よりひどいクソサメ映画を生み出し続けるクソサメ・スパイラルを醸成し、これでもかとクソサメ映画が量産されてしまったのです。これがハリウッドに巣食う闇の無法地帯ことクソサメ映画界の真実なのではないかと考えられます。



本作の出現はそんなクソサメ映画のクソサメ・スパイラルに一石を投じ、「いや…これ以上安易なクソサメ映画を量産していてはクソサメ映画界に未来はない。真面目にやろう」とクソサメ映画製作者の意識を改革してくれる効果が期待できるのではないでしょうか。



…とは言ったものの、実際のところここ日本においても「デビルシャーク」のDVDを崇め奉る邪教が密かに蔓延るなど、もはやクソサメ映画は単なる好事家のオモチャを通り越して悪魔崇拝カルトに近い領域にまで達しており、この程度ではもはや取り返しがつかないとも考えられます。「デビルシャーク」はなんか知らんけど写真集まで出ているらしいですからね。






いやあ、清々しいほどクレイジーですなあ。

新たなニエを求める邪教徒共の祈りがある限り、アメリカ産クソサメ映画は量産され続けることでしょう。だが私は忘れない、それにわずかでも抵抗しようとした電脳鮫(サイバージョーズ)がいたことを…。


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