概要
原題：THE BORT製作：2018年イギリス/マルタ共和国
発売：カルチュア・パブリッシャーズ
監督：ウィンストン・アゾパルディ
出演：ジョー・アゾパルディ
マルタの漁師が、小さなボートに乗って釣りに出かけた。すると濃い霧が漂いはじめ、ボートが故障し立ち往生してしまう。そこに漂流中の廃棄されたボート「アイオロス号」が現れる。それに乗り込み港へ通信を試みるが、そのボートはまるで意思を持つかのように彼を船内に閉じ込め、走り出すのだった。
予告編
感想
漁師が一人で幽霊船に閉じ込められ、えらい目に遭う。…というだけのシンプルな話のはずなんですが、何だか妙に意味深というか難解です。冒頭、漁師が幽霊船に乗り込んだ時、普通のホラーファンであれば「この人が殺されるまでがプロローグなんだな」と思うはずです。が、本作は最後までその名前も分からない漁師が幽霊船で悪戦苦闘する様子が延々と描かれます。かなり風変わりな構成です。そのうえ登場人物は最初から最後まで彼一人だけしかいないのでセリフも極端に少なく、何が起こっているのかは全て映像から読み取らねばなりません。唯一ヒントとなり得るのが幽霊船の名前「アイオロス号」で、これはギリシャ神話に出てくる風を自在に操る神のことです。アイオロスはオデュッセウスが順調に航海できるように荒くれた風を皮袋に封じ込めて渡したが、オデュッセウスの部下がうっかり開けてしまったために暴風が吹き荒れ、彼の船はまたアイオリア島に逆戻りしてしまったとか。
マルタを囲む地中海にはその手の民話が豊富にあるそうで、中には多分怪談めいたものもあるのでしょう。本作は前述のアイオロスの神話とその手の怪談を組み合わせて、マルタの漁師たちの海に対する畏怖心みたいなものを呼び起こそうとしているホラー映画なのではないかと思います。
と言っても私はマルタのこともギリシャ神話のことなんかも大して何も知らんし、単なる憶測だけで語っているに過ぎませんが。アイオロスのことも観終わってから調べて分かったことです。そういう人間から見て本作が楽しめるホラー映画だったのかと問われると、正直言って別に大して面白くは無かったと言わざるを得ないのも確かです。何といってもトイレに閉じ込められているシーンの長さには閉口しました。トイレの窓から幽霊船を色々コントロールしようと試みてるのは器用だなと感心しましたし、閉所恐怖症の人にはかなり来るものがあるシーンなのかもしれませんが。あといくらのどが渇いたからといってトイレの床に溜まった水を飲むのはいかがなものか。
漁師が幽霊船から逃げようとして海に飛び込んだ時、もしかしてサメが出てくるんじゃないかなとよこしまな期待をしてしまいましたが、イルカの群れだった時はさすがにガッカリしました。地中海にも結構サメがいるって聞きますけどね。
そんな感じの映画なので、マルタ共和国やギリシャ神話に興味のある人にはオススメできますが、それ以外の人はたぶん眠くなるだけだと思います。
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