「グレート・ホワイト」 感想 伝統的省エネ手法を受け継ぐサメ映画

概要

原題:GREAT WHITE

製作:2021年オーストラリア

発売:カルチュア・パブリッシャーズ

監督:マーティン・ウィルソン

出演:カトリーナ・ボウデン/アーロン・ジャクベンコ/キミエ・ツカコシ/ティム・カノ/タチアナ・マリアノヴィッチ


チャーリーとキャズは、日系人カップルをセスナ機で小さな島へ連れてきていた。だが、そこでサメに喰われた男の遺体を発見する。さらに海上に転覆したボートを見つけたチャーリーたちは生存者がいないことを確認。しかし、セスナで飛び立とうとしたところをサメに襲われ飛行不能に陥ってしまう。


予告編

感想




今週は珍しいことにリアル系のサメ映画とワニ映画が同時にリリースされました。私はどちらかと言えばサメ映画派なのでこっちから鑑賞してみたわけですが。



内容としては、セスナ機をサメに沈められてしまい、海上を救命ボートで漂うことになった男女5名のサバイバル劇。ってことで、特に何のひねりもないものすごくありふれたシチュエーション。人間ドラマは可もなく不可もなく。投資アナリストの日系人がものすごいクソ野郎だったのが少し印象に残ったくらいで、あとは常識人ばかり。



サメも別に火を噴いたりSNSをやってたりすることもなく、基本的には至極ノーマルなただのホホジロザメ。…ただ、リアル系のわりにはやたらガオ~ガオ~と吠えてたのは気になりましたが。ついでに言うとあそこまでしつこく救命ボートを狙うのも不自然ですね。まあそれを言ったらサメ映画が作れなくなるけど。



それより問題なのは、典型的な「サメが映らないサメ映画」だということです。昔はコスト的な問題もあってサメ映画には基本サメが映らないものだという常識があったんですが、手軽に資料映像やCGを使えるようになってからはそうでもなくなりました。しかし本作は明らかに時代を逆行している。あらゆる面で古典的。これはおそらく「ジョーズ」を真面目に意識していると思われます。今どき珍しい奴がいるもんだなと。「ジョーズ」はサメをできるだけ映さずに恐怖を煽っていたので、それに影響を受けた映画製作者たちはまずサメをあまり画面に出したがらないのです。単にサメを出さないための言い訳を兼ねていることもありますが。



しかしサメを見せずに恐怖を煽るなんて芸当が出来るのは当然スピルバーグのような一部の天才監督だけ。凡人がマネすると痛い目をみます。本作も案の定救命ボートの上でガタガタ揉めてるだけのシーンがかなり長いので結構だるい。サメが本格的に襲ってくるのは1時間を過ぎてからだし、人に食らいつくシーンも基本海に引きずり込んで水が赤くなるだけという由緒正しい省エネ手法が使われています。どこまでもクラシックなスタイル。



まあ、とはいえ、魑魅魍魎が跳梁跋扈する「サメ映画」という括りの中でみれば、本作はかなり上等な部類に入ります。サメ映画の大半は圧倒的に本作よりクソなんです。本作は平均点よりはかなり上、優等生的な出来栄えと言えます。最近だとアサイラム製の「ホワイトシャーク 海底の白い死神」も海上でリアル系ホホジロザメに襲われるサメ映画でしたが、あれとは比べ物にならないレベルにはあります。



なので、真面目なサメを求める層にはかなり喜ばれる良サメ映画ではないかと思います。ま、そういう目で見るとガオ~ガオ~と吠えまくっていたのは頂けませんが…


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