「ディケイド 腐敗する者たち」 感想 壊れた中年男の潔癖な日常

概要

原題:Dacay
製作:2015年アメリカ
発売:アマゾンプライムビデオ
監督:ジョセフ・ワートナーチェイニー
出演:ロブ・ザブレッキー/リサ・ハワード/エリシャ・ヤッフェ

遊園地で清掃員をしている孤独な男ジョナサン。ある日、彼の家にコソ泥の少女2人組が侵入する。ジョナサンと出くわした彼女らは勝手に頭を打ったり車にはねられたりして死亡。ジョナサンは頭を打って死んだ少女を氷漬けにしてガールフレンドとみなして家に置いたまま生活する。だがその死体は次第に腐敗し始め、潔癖症のジョナサンは耐え難い苦痛を覚えるようになる。

予告編


感想





アマゾンプライムの謎すぎる変な映画。プライムという場がなければ決して日本に入って来なかったであろう、奇っ怪な芸術映画。つまらなくはなかったけど、この映画を撮ることによって誰が得をしているのか全く分からない。月額500円でこんな異様な映画体験が出来るんだからプライムは全く素晴らしいサービスですね。YOUTUBEみたいに再生回数表示してくれないかな。一体何人くらいがこういう謎の映画を観ているのか気になるんですよ。



プライムでは「孤独が生み出す狂気のホラー・サスペンス!」などと煽ってますが、全く持ってホラー・サスペンス感はビタ一文ありません。んで、原題は「DECAY」なのになぜか邦題は「ディケイド」になってる。なんで過去形にしたのか。それとも仮面ライダーに便乗しようとしたの? ついでに「腐敗した者たち」とか言ってゾンビ映画感を出そうとしてるように見えますが、出てくる死体は1体きりです。


で内容ですが、潔癖症の母親からの病的な教育が元で心が壊れてしまっている中年男ジョナサンの奇妙な日常が至極淡々と繰り返し描かれます。これは心が壊れた老婆の奇妙な日常を淡々と繰り返し見せてきた「ドールズ 異質な同居人」と同系統のサイコロジカルアートムービーではなかろうか。

とはいえ、ジョナサンの日常は「ドールズ」の婆さんよりはまだ面白い。
遊園地の清掃員という職を持っていて、職場で仲良くしている同僚もいる。家では温室でお花を育てて日々写真を撮影し入念に記録を取っている。カギをコレクションする趣味もある。気にかけてくれる隣人のおばさんもいる。まあ、ジョナサンがあまりにも不愛想かつ潔癖すぎるので同僚と隣人はイマジナリーフレンド感ダダ漏れですが、場面転換と会話シーン、過去回想などがある分「ドールズ」ほど見ていて苦痛ではありません。

さらに、その異常な潔癖生活の中に「事故死した少女の遺体を愛でる」という異常な習慣が入って来て「ガールフレンドが出来た」とイマジナリーフレンドたちに吹聴する。害はないとはいえ寒々しくなるほどのサイコっぷりです。どうしてジョナサンの心はこれほどまでに壊れてしまっているのか。回想によってその謎が徐々に明らかにされていく様子はそこそこ興味が持てる展開です。警察がたびたび捜査にやってくるので若干スリルがないこともない。

孤独な生活がガールフレンドによって少しは楽しくなるのかと思いきや、だんだん腐って来てゴキブリだのウジ虫だのが涌いてきてしまい、ますます病的になっていくジョナサンはある意味見ものです。決して楽しいものではないが、視聴者を壊れた心の中に落っことすような突き放し方が独特の映像美と相まって非常に個性的です。クオリティは高い。こういうのを見て誰が喜ぶのかは全然分かりませんが、尖りまくっている映画ではあるので刺さる人もどこかにはいるのでしょう。

プライム会員ならばこういう異常な映画体験に身を晒してみるのも一興ではないでしょうか。

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