「死霊匣 SHIRYOBAKO」 感想 ビックリできないビックリ箱

概要

原題:The Jack in the Box
製作:2019年イギリス
発売:ブロードウェイ
監督:ローレンス・ファウラー
出演:イーサン・テイラー/ロバート・ナイアン/ルーシー=ジェーン・クインラン/フィリップ・ライドアウト/ダリー・ガードナー

街の博物館で働き始めたケイシーは、寄贈された品の中から古いビックリ箱を見つける。精巧な仕掛けのそれは、来館者の興味を引くと思われた。しかし、その日の夜から博物館で連続して行方不明者が発生してしまう。ビックリ箱に封じ込められていた悪魔が夜な夜な人を喰らっていたのだ…

予告編



感想


イギリス産の低予算ピエロホラー。
大して面白いわけではないが、ツボは押さえてあるのでまあボチボチ暇つぶしにはなるかなといった感じ。言い方を変えれば既存のフォーマットに従って作っているだけなので鑑賞中は主に既視感との戦いになります。睡魔が相手じゃないだけましですが。オリジナリティを探すのに苦労しました。



「曰くありげな美術品を発見」
 ↓
「関係者が次々と失踪」
 ↓
「主人公の身に危険が及ぶ」
 ↓
「ネットで調べて過去の持ち主に会いに行く」
 ↓
「ネットで見つけた専門家に対策を教わる」


こういう流れの都市伝説系ホラーはもうあまりにもありがちすぎて様式美の域に入りつつあります。

まあ、大筋はあえて様式美に従うというのも全然ありですよ。変に捻って失敗するよりはまだいいと思います。しかしその分、細部では他との差別化を図らないといけない。

本作の場合はその「曰くありげな品」がビックリ箱であるという点でしょうか?
とは言っても、ビックリするようなタイミングで中身が飛び出すシーンなど一切ありません。ビックリ箱としての機能は全く果たしてない。ピエロモンスター(悪霊?)が封じ込められただけのただの箱です。

ホラー映画としても珍しいくらいジャンプスケアなシーンはございません。私はジャンプスケア系の演出が嫌いなので別に構わないんですが、ビックリ箱をテーマにしておきながら観客を全く驚かせないのもいかがなものか。


このビックリ箱、あの悪夢的珍作「グレムリン2017」の箱とどこか似たような雰囲気です。一度開けるとピエロモンスターが時々出て来て決まった数だけ人を喰らう。喰らった人間の数をカウントする機能があるのはちょっと良いですね。ただ誰もそのカウンターを気にしてませんでしたが。話がありがちなんだから細かいギミックにもう少しこだわりを見せてほしい。

主人公のケイシーは箱を怪しんでも、箱そのものを詳しく調べようとはしません。ネット検索はしますけどね。こういう都市伝説系ホラーを観るたびに「何でもネット上に答えがあると思うなよ」と言いたくなるんですが、まあほぼ100%ネット上に正解が転がってるんですよね。こうも毎回ネットで即解答が見つかると便利になったと思う反面、情緒に欠けると感じるのは私だけではありますまい。謎解きの一つくらいあってもいいんじゃないか?


肝心のピエロモンスターですが、これはまあまあおぞましい雰囲気が出ていて悪くはない。ピエロだけど日本の怨霊ホラーみたいなオーラが出てる。小学校低学年くらいのお子様ならば充分怖がれるのではないかと思います。

なんせゴアシーンも一切ありませんからね。被害者が襲われる瞬間になるとカメラが切り替わってしまう。お子様にも安心安全かもしれないけど、いい大人が観るにはエグ味が足りない。こういう凡作こそゴアシーンに注力すべきだと強く思うんですがね。ということで、ソツなく行儀よく作られてはいるものの、いまひとつインパクトに欠ける作品でした。

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