「スパロークリーク 野良犬たちの長い夜」 感想(ネタバレあり) 極右民兵組織の内ゲバ

概要

原題:THE STANDOFF AT SPARROW CREEK
製作:2019年アメリカ
発売:クロックワークス
監督:ヘンリー・ダナム
出演:ジェームズ・バッジ・デイル/ブライアン・ジェラティ/パトリック・フィクスラー/クリス・マルケイ

ミシガンの墓地で警官の葬儀を狙った銃撃事件が発生。無線でそれを知った極右民兵組織は急きょメンバーを招集する。彼らの倉庫から銃と手榴弾が消えていたのだ。犯人が組織の中にいると判断したリーダーは、元警官で尋問のスペシャリストであるギャノンにメンバーを尋問させる。だが、ギャノン自身も重大な秘密を抱えていた。民兵たちは互いに疑心を深めていくが。

予告編



感想


「レザボア・ドッグス」の現代版と言われているらしい本作。私があれを観たのは20年ぐらい前のことなのでもう細かいところは忘れましたが、暗い倉庫の中でむさくるしいオッサン共が互いを疑いながらなんやかんやスカしてカッコつけた会話劇を繰り広げるという点は確かにそれっぽいです。延々と地味な絵面が続く割りには緊張感があって退屈はしないし、ラストはそれなりに意外な真相を見せてくれる。「レザボア・ドッグス」ほどではないにしろ、良いサスペンス映画だと思います。



しかし、本作に出てくるオッサン共は「極右民兵組織」という全く馴染みのないよく分からん集団。メンバーは元潜入捜査官だったり建築業者だったり白人至上主義者だったりと色々ですが、彼らは警察を憎んでおり、いつか蜂起して警察と戦争を行うために武器を違法に集めている過激派なんだそうです。実際にそういう輩がいるのかどうか知りませんが、少なくともそれを主役とする映画は初めて見ました。


「そんな生き物もいるのか」…と彼らに興味を持てれば、前半はかなり楽しめるのではないかと思います。中でも白人至上主義者の組織から抜けようとしたオッサンの過去話はなかなか壮絶で、何でも抜けようとすると組織の手の者がどこまでも追って来て身内を不幸に陥れるとか何とか。一応現代アメリカの話なのに、なんだか抜け忍みたいな処遇に聞こえるんですが。しかし2020年現在でも白人至上主義者の信じがたい蛮行で暴動が起こっていることを鑑みると、笑ってはいけない話のような気もする。


しかし中盤で一切口を開かず話も出来ない若者の尋問に入ると、どうも会話のスカし度がどんどん上がり始め、中二病の域に近づいてきます。「ライ麦畑でつかまえて」に計画を書き込んでるだの、話せないフリをしていたけど実は饒舌だっただの、ミシガン大学主席で周囲を見下しているだの。こういうメンバーが混じっていると一見物珍しい極右民兵組織も何だか安っぽく感じられてしまう。単なる功名心で嘘の自白をしてしまうくだりもそれに拍車をかけている。構成員はちゃんと選ばないといけませんね。

なので、そこら辺から若干どうでもよくなってくる感も否めないんですが、幸い尺は90分もないのでそんなにダラダラすることなく衝撃のラストへとなだれ込んでくれます。全体的に気取りまくりなので私の好みではありませんでしたが、「レザボア・ドッグス」みたいな映画が好きな人なら新作でレンタルしても損はしないレベルかなと思います。


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