「エル・チカーノ レジェンド・オブ・ストリート・ヒーロー」 感想 アステカ族の戦士vs麻薬カルテル

概要

原題:El Chicano
製作:2018年アメリカ
発売:ハピネットピクチャーズ
監督:ベン・ブレイ
出演:ラウル・カスティーロ/ジョージ・ロペス/エイミー・ガルシア/ケイト・デル・カスティーリョ

イーストロサンゼルスでギャングの大量殺人事件が発生。捜査に当たるディエゴ刑事は、事件に自分の死んだ弟ペドロが関わっていると知る。ペドロは伝説の覆面ヒーロー「エル・チカーノ」となり、街を占拠しようと企むメキシコ麻薬カルテルと戦おうとしていたのだ。ディエゴは弟の遺志を継ぎ、覆面を被ってメキシコ麻薬カルテルとの抗争に身を投じるのだった。

予告編




感想


覆面ヒーローが街を守るためにメキシコ麻薬カルテルと戦う!っていう典型的な自警団映画。ただし主人公ディエゴはただの人間なので特殊能力とかは何も無し。ヒーローと言ってもいまいち爽快感は無く、非常に陰鬱でシリアスな内容です。



大筋はめちゃくちゃありがちと言えばありがちなんですが、それだけにこういうヒーローものは製作国のお国柄が強く出てくるのでそこを楽しむものと思っています。この前はケルベロス 紅の狼というブラジル産の作品を見ましたが、これもよくある筋ながらもブラジル独特の描写が興味深い良作でした。


とはいえ、本作は一応アメリカ映画です。
それではバットマンやパニッシャーとあまり変わらないのではと思いきや全然違う。

住人の99%がヒスパニック系と言われるイーストロサンゼルスが舞台で、主役はメキシコ系アメリカ人。メキシコ映画ではないけど、全体的にメキシカン全開な雰囲気です。ブラジル人の敵が悪徳政治家であるように、メキシコと言えばやはり敵は凶悪な麻薬カルテル以外あり得ない。

本作を観るまで全く知りませんでしたが、過激派メキシコ人はカリフォルニアの一部の地域をアメリカに奪われた元メキシコ領地だと考えているらしいです。そういう土地に住むアメリカ系メキシコ人(チカーノ)がそれを奪い返そうとする純血メキシコ人と血で血を洗う抗争を繰り広げる。なかなか複雑な因縁と経緯の戦いだなあと思います。その辺をサスペンス調で展開してくれるので興味は尽きず楽しく鑑賞することができます。これは良作。

ただ、アクションは多少物足りない。ディエゴは普通の刑事なのでいくら伝説の覆面を被ってヒーローっぽく振舞おうともそんなに人間離れした大活躍は当然出来ません。いや、普通の人間としては充分活躍してましたけども。
本作に限った話じゃないんですが、主役をあくまで普通の人間として扱うのであればわざわざヒーロー物にしなくてもいいんじゃないかなと思うんですよね。全体的には超シリアスなわけだし、そこだけ幼稚臭く見えてしまうのはデメリットじゃないのかと。だいいち、マスクしてあんなに運動したら苦しくなりますからね…。しかもあのマスクは通気性が全くなさそうだし。そういうリアリティが気になってしまい、犯罪ドラマとしての没入感が途切れてしまう。


「ケルベロス」はガスマスクを被っただけだったのでヒーロー感がほとんどなかったからいいけど、アステカ族の化身である「エル・チカーノ」はそうもいかない。しかも結局正体はバレてるし、麻薬カルテルとの争いは今後も超激化しそうな気配がプンプンしたまま終わってしまいます。ディエゴの身内に死亡フラグが立ちまくってるように見えて仕方ありません。続編が作られるならいいんだけど、そうじゃなかったら私の想像の中ではあの後彼らはとんでもなくムゴイ目に遭わされてますよ。

まあそういう引っかかりは多少ありましたが、全体的には非常に楽しめました。





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