「ビューティフル・カップル 復讐の心理」 感想 出来はいいがリアルすぎて楽しくはない

概要

原題:Das schönste Paar
製作:2019年ドイツ
発売:クロックワークス
監督:スヴェン・タディッケン
出演:マクシミリアン・ブルックナー/ルイーゼ・ハイヤー

マルテとリヴは、バカンスで海辺のコテージへやってきていたところを獰猛な若者3人組に襲撃される。屈辱的な命令を聞かされ、性的暴行を受けてしまう2人だったが、命までは奪われずに済んだ。それから2年後、忌まわしい事件を乗り越えて幸せな生活を送っていたマルテたちだったが、街中で偶然暴行犯を見つけてしまう。

予告編



感想


う~ん、これは何となくでレンタルしてしまいましたが、全然面白くない…。
いや、出来自体はものすごくいいと思うんですけどね。リベンジサスペンスと宣伝されてるし、とりあえずサスペンスのラベルはつけましたが、これは全くもってサスペンスではない。
というか娯楽映画ですらない。エンタメ感ゼロ。



では何なのかというと、無軌道な若者から性的暴行を受けたカップルの苦しみと葛藤。その感情がとんでもなくリアルに描かれています。性的に暴行されたことのない私から見ても本当に超リアルだと感じるほど出来が良い。

それはいいんですが、そんなもん見ていて楽しいわけがありませんね。ヒツジが襲ってくる映画を観て喜んでいる私のようなアホにはちょっと高尚かつ高度すぎる心理ドラマでした。


無軌道な若者にひどい目に遭わされたカップルが2年後に偶然犯人と出くわしたらどうなるのか? その辺が緻密にシミュレーションされている作品なわけですが、個人的には復讐肯定派なのでとりあえず拉致ってジックリネットリ嬲るように拷問してあげるべきだろうと思います。というのは冗談として、マジメに考えるとネットリンチなんか悪くないんじゃないかと思います。やったことないから知らんけど。

しかし、この「2年後」というタイミングが結構微妙でして、もうすでに立ち直って幸せに生活しているんだから事件のことは忘れて無視してもいいんじゃないかなとも思えるんです。現に妻のリヴはそうしたいと言いますし。夫のマルテは事件後にボクシングを習ってはいるものの、復讐をやりきる度胸も力もない。

ジャン=クロード・ヴァン・ダムなら回し蹴りで気持ち良く復讐できるかもしれませんが、一般人には無理なんです。無力なのに復讐を望むほど不毛なこともない。作中でも中途半端に追いかけ回してはモヤモヤしている。何らかの決着はつけたいが、どうしていいかわからない。一般人の反応としては異常なほどリアルです。劇映画としてはくそ面白くないことこの上ないが…。

しかしよく考えると別に私じゃなくても本作を観て楽しいと感じるような人がいるとは思えません。では一体誰に向けて撮った映画なんでしょうか。本作は一応ハッピーエンドなので、リアルに犯罪被害に遭われた人が見たらそこそこ救われた気分になるかもしれません。あるいはこういう決着のつけ方もあるのかと参考になるのかも。他には、犯罪被害者がこういう思いをしていると知ることができるので、身近にそういう人がいるのであれば適切な気遣いができるようになるでしょう。たぶん。

そういう意味では非常に社会的意義のある映画だと思いますが、単純にエンタメ映画を求めている人が見てもツライだけなのでご注意ください。




↑スリリングなサスペンスっぽいジャケットだよなあ…。

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