「ドラマクイーン フルコーラス」 感想 映画製作には妥協も必要か

概要

製作:2020年日本

配信:三笠大地

監督:三笠大地

出演:久保宏貴/風谷南友/みやたに/ばんこく/阿部隼人/大藤由佳/斉藤瑞暉/江田來花/村松和輝/小野孝弘/森田このみ/オギクボノトム/愛田天麻/諸星敦士/土井康平/宮守風有/花咲めぐ


ある狭い密室に閉じ込められた男女6人。彼らは記憶を失っており、なぜかただのマンションから脱出することが出来ない。彼らを閉じ込めた何者かが、その部屋で起きた男女の争いを断片的に見せ、どちらが悪いか裁判して決めろという。しかも、悪いと判定された性別側は全員死刑になるというのだが…


予告編

感想



邦画はあまり見ない方なんですが、最近は邦画をオススメされることがよくあり、観る機会が増えています。本作もその一つです。



クソ映画マニアに勧められた場合は別として、そうでないマトモな人に「これを見てくれ」と言われて観て、もしつまらなかったらどうしようかと微妙に不安になるんですが、本作はちゃんと楽しめるクオリティで良かったです。



序盤はかなり不穏な気配を感じたんですけどね。なんせまた密室で目覚めた記憶喪失の男女6人によるデスゲーム風のナニカが始まるわけですから。「Q」「ゲームマスター」に続いてまたこのパターンか、密室じゃないけど「逃走中」も似たようなもんだしインディーズでも商業でも邦画はデスゲーム好きすぎだろ!とか思ってしまいましたよ。



ただ本作の場合、その密室があまりにも生活感あふれる普通のマンションの一室なうえ、6人を閉じ込めておくにはあまりにも狭すぎる。ここまで人口密度の高いデスゲーム会場は見た事がない。さらにそんなただのマンションの一室から出ていけない理由がかなり強引というか不自然。さらに、何かに触れるとそこで起きた事件の記憶が断片的に思い出されるという設定。



となると「〇〇〇〇〇ィ〇ィ〇」的なやつかな…とすぐ想像はついたので、何だかよく分からない男女裁判デスゲームが始まっても変な期待はせずに済みました。騙し合いや頭脳戦、スプラッターな退場劇はやらないだろうなと。このデスゲームは賑やかしのようなもの。



それより男女裁判の題材となる「映画監督と主演女優のイザコザ」を描いたパートの方が本筋で、こちらの方は「実話を基にした」らしいんですが、相当に胸糞悪い話で心が抉られます。



私も普段インディーズ映画を観てはクソ映画だの何だの好き勝手言っちゃってるわけで、こうも心労を抱えながら映画を撮ってる監督の姿を見せられるとそれだけで心に来るものがありますね。まあ作中の監督は妥協を許さない主義の熱い男なので、itnの手抜き謎映画みたいなやつとは全然違うとは思いますけども。



それなのに、主演女優が「ドラマクイーン」(必要以上に騒ぎ立てる人)と分類されるタイプのサイコな人間だったせいでとんでもないことになっていく。と言ってもそんなに珍しいタイプではなくその辺にわりといると思いますが、こんな分類名が付いてるとは知らなかった。



男女裁判デスゲームからしてフェミ系の内容かと思いながら観てたけど、この事件はどう考えても主演女優の方が明らかに悪い。いや、そんなのを連れてきたプロデューサーも悪いのか…。映画監督ってやつは少なくとも無名のうちは相当妥協しながら映画製作しないといけないんでしょうね。そんな状況でのあの監督(久保さんの方)の叫び、そして無情にもほどがあるオチの見せ方。あれは下手にスプラッターやるよりよほど残酷なインパクトがありました。




「ドラマクイーン フルコーラス」(Amazon Prime Video)



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