「森の中のボッツォ」 感想 悪魔王 VS リーサル・ニンジャ

概要

原題:Boozo in the Woods

製作:2025年トルコ

配信:OMER SARI

監督:OMER SARI

出演:Tolga sabuncu, Hunde sude alinca


帝魂の騎士団と悪魔王ボッツォの戦いが激しさを増していた。一方、傭兵のスカイラー中尉は行方不明のアーティファクト”ラザロの書”を調査する極秘任務を1000万ユーロで請け負う。だが、それは悪魔王ボッツォの所有物であり、死者を蘇らせてしもべにする力を持つ危険極まりないものだった…


予告編

感想



いつの間にかぬるりと配信開始になっていたトルコ産アマプラ謎映画。

森を舞台にしたよくある超低予算ピエロホラーかな?と思ってレンタル(200円)してみました。



ところがどっこい、これが途方もない珍作!

Z級レベルの貧乏臭さですが、熱量はかなり高く、奇妙な見所満載で100分超えの長尺を一気に魅せてくれます。これは実に楽しい作品です。



まずオープニングでは「帝魂の騎士団」なる中世ヨーロッパのような恰好をした人々が「悪魔王ボッツォ」「ラザロの書」の脅威について延々激論を交わしています。それが10分も続くので、てっきりこれは中世ファンタジーものなんだなと思ったところでタイトル表示。これはプロローグに過ぎなかったか。



本編は現代が舞台となり、どこぞのエージェントが死者を蘇生させるというアーティファクト「ラザロの書」の捜索を凄腕の傭兵・スカイラーに依頼。コイツの登場シーンだけでもう私のような好事家は大興奮必至のインパクトです。



↑マシーナリー・リーサルニンジャことスカイラー中尉。
この画像は予告編から引用しました。


ちなみに本編では



自宅のプール前で
水着姿で目隠しをし、
おもむろに手裏剣を投げ、
バク宙して華麗にポーズを決め、
プールに飛び込んで泳ぎ始める


という謎すぎるムーブを披露した後にこの衝撃的紹介画像が出てきます。



しかし、こんなド派手な登場をしたわりにはその後まったく出てこないなあ~…


と思いながら観てたんですが、てっきり別人だと思っていた傭兵が実はコイツだったことが終盤になってから判明しました。髪の毛が伸びてモジャモジャ頭になってたので名前呼ばれるまでわからなかったんですよね。どおりでそういえばちょいちょい無駄に側転とか前転してたな~と。その謎ムーブが忍者アピールだったんですね。



髪の毛伸びるほど時間経過してるとは聞いてなかったのでそれもビックリですが、さらに驚愕のツイストをかましてきます。


一応ここからはネタバレ注意です。




冒頭だけでなくその後もちょいちょい「帝魂の騎士団」が出てきて悪魔王ボッツォとの戦いに赴くシーンが入ってきます。武器は剣や弓だし、セリフは大仰だし、馬に乗ってるし、森の深部に入る時は馬との別れを惜しんでいます。これはどう見ても中世の騎士たち。過去にはそんな戦いもあったのだと、遠い過去の時系列が同時進行するタイプの作品なんだなと思いながら観ていたわけですが…



あろうことか帝魂の騎士団(3人)とマシーナリー・リーサルニンジャがボッツォの潜む森で出くわしてしまいます。



異なる時代の登場人物が、一体どうして!?



これは悪魔王ボッツォがラザロの書の力を使って時空の歪みを生み出したに違いない。怪しい雰囲気で本が光ってるシーンもありましたしね。



私はごく自然にそう解釈したのですが、彼らはそんなん知るかとばかりに驚くべき会話を繰り広げます。





リーサル忍者「無線が使えない」


帝魂騎士団兵「ラザロの書が魔力を放っていて、電子機器を全て妨害しているんだ」






電子機器を…

妨害しているだと!?



なんということでしょう。

あの中世ヨーロッパの騎士みたいなナリをした奴らはまさかのバリバリ現代人でした。

なんという衝撃の叙述トリック…!

確かにこの少し前に銃使ってたから「ん?」とは思ったんですが、まあ中世にも銃くらいあるよな…で流してしまったくらい現代人には見えなかったのに…



いや、そういえば確かに英語がプリントされたパーカーを着ている子供もいたわ…。そこは低予算だから仕方ないよなでスルーしていたのが悪かったようです。私の眼が節穴だったんです。製作者はこれ別にツイスト仕込んだとは思ってない。



まあそんな感じで帝魂の騎士団とリーサルニンジャが手を組み、いよいよクライマックスでは



【激しい音楽】



という字幕表示と共に悪魔王ボッツォに迫ります。


字幕だけで何の音も鳴ってないけどな!


ミスなのか確信犯なのか分からん…

本当に何から何まで新鮮な驚きを提供してくれる映画です。



ちなみに悪魔王ボッツォもいつの間にか

「道化師ボッツォ」

にえらい格下げされてたりします。一気にショボイ奴に見えてきた。ゾンビ軍団を従えて…と言っても数人だしなあ。



しかしそれらのツッコミどころはあっても、道化師ボッツォとリーサルニンジャとの決戦は非常に軽やかなアクション、スプラッターなダメージ表現、グロテスクなメイクのゾンビたち、そして一見愚かで無駄にもほどがあると思われたニンジャのある行動が大逆転をもたらす構成の妙など実に気合の入った作りになっています。これは珍作的な意味だけでなく真っ当に観ても充分おもしろい、途方もないクオリティのZ級映画だったなあといたく感動いたしました。レンタルじゃなく1000円で購入することも検討しております。




「森の中のボッツォ」(Amazon Prime Video)



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