「動物界」 感想 アニマライズ・ヒューマンドラマ

概要

原題:Le regne animal

製作:2023年フランス・ベルギー

配給:キノフィルムズ

監督:トマ・カイエ

出演:ロマン・デュリス/ポール・キルシェ/アデル・エグザルコプロス/トム・メルシエ/ビリー・ブラン


謎の突然変異により、人間が徐々に動物化していく奇病が流行。フランソワの妻ラナも動物化し、隔離されてしまっていた。だが、ラナの移送中に事故が起こり、数十人のどうぶつ人間が脱走。フランソワと息子エミールは行方不明になったラナを探すが…


予告編

感想



近未来のフランスで人間と動物のハイブリッド新生物がどんどん生まれていくという荒唐無稽な設定のヒューマンドラマ映画。



予告編を見た時、「アニマライズ・スリラー」か…少しはアニマルパニックなシーンがありそうだな…と感じたのでがんばって早起きして観てきました。AM8:25からとやたら早すぎてつらかったけど、しかも本編128分と長すぎてダルいけど、アニマルパニックのためなら仕方ありますまい。



しかし、これが思っていたよりも真面目に良い映画で困惑。これのどこが「アニマライズ・スリラー」なんだ。なぜどうぶつ人間などという一見愉快そうなネタでこんなにも深刻なムードの映画を撮ってしまうのか。ラストシーンなんて不覚にも泣きそうになってしまったではないですか。やめてくれ…。こっちは「愛に感動して泣ける映画」なんて全く求めていないんですよ。どっちかというと血涙が出るような映画が観たいんですよ。



最近の欧州映画らしく、移民とかマイノリティ差別とかコロナ禍とかそういった社会問題を練り込んだ現代の寓話的な仕上がりです。が、そういうメタファーの話は他の人が存分に語っているはずなのでここではスルーします。



アニマルパニック的には序盤のスーパーの食品売り場に現れたタコ人間のくだりがピークでしょうか。どうぶつ化した人間は徐々に記憶や理性を失くしていくようで、海産物を喰らうためにスーパーで暴れるタコ人間。もうそれだけで1本の映画を撮れるおいしいネタだし、本作でもせめてもう少し濃厚な見せ場に仕立てて欲しかったところですが、極めてあっさりした淡泊な味わい。タコだけにね。タコ人間の姿もほとんど映らないしこれはもったいない。



作り手はそういうことに興味がないのでしょう。まあテーマからしてどうぶつ人間を加害者的に描くのはNGと思われるので仕方ないのか。どうぶつ人間より、可愛らしい少女のような声でしゃべるおばさんの方にインパクトを感じたくらいです。そうと分かっていれば無理して早起きする必要はなかったものを…。



いや、良い映画には違いないので少なくとも物語に愛とか感動を求める人、泣きたい人であれば劇場で観る価値は充分ありますけどね。エミールと鳥人間フィクスとの交流と絆も感動的なものがありましたしね。私も動物化するんだったら鳥系がいいかな。喰われる心配がないならナマケモノでもいいけど。








「アニマル・パージ」(Amazon Prime Video)

↑おフランス産アニマル映画と言えばこれかな。

まあクオリティは劣悪ですが。



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