「シャイニング・ストーンズ 三つの魔法石」 感想 近年稀に見る驚異的珍作

概要

原題:Dekiru: The Three Stones

製作:2017年アメリカ

配信:トランスワールドアソシエイツ

監督:フレッド・グラント

出演:シェルドン・フォーレ/エイダン・シュローダー/ルーク・ウェスターフィールド


とある無人島に流れ着いた二人の少年は、そこで出会った”マスター・ムゲンダイ”と名乗る男にそれぞれ ”デキル” ”チカラ” と名付けられ、戦士になるための修業をつけてもらうことに。だがある日、青い魔法石を賭けて勝負したデキルはチカラに敗れ、海に流されてしまう。そして7年後、マクフォール家の養子となったデキルはライアンと名前を変え、大学生活を謳歌していたが。


予告編

感想



今月はアマプラに大量の謎映画が有料配信されたので物色していたところ、一見非常に地味なファンタジー映画である本作が私の珍作アンテナに引っかかりました。一体何なんでしょうか、この奇怪なあらすじは??



いや、ストーリーの大筋自体はそこまでおかしいものではないのかもしれません。幼い頃に何の理由もなくいきなり文明から隔離された島?に漂着した少年二人が謎の日本人に戦士としての稽古をつけられ、7年後に不思議な力を持つ3つの魔法石を賭けて戦うことに…っていう話自体は…いや、やっぱりなんかおかしいですね。二人の少年が何者でどこから来たのか、どうして何の疑問もなく理不尽なお稽古を受けているのか、その島にはサムライ風の日本人ひとりしか住んでいないのか、何一つ分かりません。



そしてどいつもこいつも演技力が壊滅的にやばい。ポロニア映画以下かもしれません。かろうじて主人公の相棒である自称「セクシーすぎて手に負えない男」ことカイルくんだけは頑張っていますが。



しかしそんなことより最大のツッコミどころは彼らの名前でしょう。



「私は悟りの境地に達している。私のことはムゲンダイ師匠(マスター・ムゲンダイ)と呼べ」


「お前は”チカラ”と名付けよう。パワー&ストレングスという意味だ」


「お前は”デキル”だ。名前の意味は”能力”(to be able)だ」




まあ…まあ、ムゲンダイ師匠とチカラはまだ分からんでもない。

しかし”デキル”とは何という素っ頓狂なネーミングセンスか!



「お前はデキルか?」



っていうセリフがダジャレみたいでじわじわきます。



しかも主人公はこのデキルくんで、原題もズバリ



「DEKIRU」



です。オープニング後にデカデカとこれが表示された時は吹きました。






頑張れ頑張れデキルデキル絶対デキル!


体が壊れるまで動き続けるんだ!(マスター・ムゲンダイのお言葉)



名前の方はこれくらいにしておいて内容の方ですが、こちらも相当素っ頓狂なものとなっており好事家は大興奮必至です。いや、三つの魔法石を巡ってデキルやチカラ、大企業の社長が三つ巴となって争う王道ファンタジーのように見えないこともありませんがね。キャラクターと会話がいちいち濃くてツッコミどころ満載でたまらないものがあります。



魔法石のひとつを偶然発見した実業家のサイファーはそのエネルギーを利用して世界最速の飛行船を作ったり、通常の10倍もの効率と10倍もの汚染物質排出を誇る発電所をわざわざ自然公園に作ったりしています。しかし彼は魔法石は3つ揃えることで真のパワーを発揮することを知り、デキルと組むことになるのですがその時の流れが面白い。


「長年わが社では最新技術を生み出してきたが、資源の使い方を間違えたようだ。今起きていることは私とは無関係だ」


ちなみに「今起きていること」とは市街地に巨大怪獣が出現して暴れていることですが、そいつは特に何の対処もされることなく最後まで放置されます。まあ続編作るのかもしれませんが、そこのところを突かれたサイファーは


「やめてくれ 過去はどうでもいい」


とのことです。

そんな彼は先進的大企業のトップのはずですが、背中に二本の日本刀を背負うという実にファッショナブルないで立ちをしており、見る者に途方もないインパクトを与えてくれます。ちなみに「その武術はどこで習ったんだ?」と訊かれた時の返しも何かヘン。


「中東で老いた師匠に習ったんだ

彼はクズ野郎だった」


クズ野郎という情報は要るのか?

続編に出す予定なのか?

そもそも武術を使うシーンがひとつもないのになぜ訊いたし。



そしてクライマックスは満を持してデキルとチカラの対決ですが、その時のチカラのセリフもすごい。



「俺は世界を操る闇を利用して

新しいことを始める

俺の思い通りだ 楽園を作るんだ

デキルも世界を支配しよう」



な…なんだ!?

この具体性ゼロの曖昧な野望は!?


これを受けてのデキルの返しがこれ。



「悪い奴は当然いる

でも いい人だっている」



まあ…

それはそうだけどさ…?



ところで本作、冒頭で「第一章」と表示されるのですが、本作中に章の区切りがあるわけではないので本作自体が「第一章」なのだと考えられます。中途半端なところで終わってますしね。第二章が作られたのか、今後作られるのか、仮に作られたところで日本で配信してくれるのかわかりませんが、楽しみに待ちたいと思います。



「シャイニング・ストーンズ 三つの魔法石」(Amazon Prime Video)




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