「呪餐 悪魔の奴隷」 感想 地獄のマンション阿鼻叫喚

概要

原題:Pengabdi Setan 2: Komuni

製作:2022年インドネシア

配給:アルバトロス

監督:ジョコ・アンワル

出演:タラ・バスロ/エンディ・アルフィアン/ネイサー・アヌズ/ブロント・パララエ


1984年ジャカルタ。ある事件で母親と祖母、幼い弟を失ったリニとその家族は、何もない国有地にポツンと建つ高層マンションへ越してきていた。今度こそ平穏な暮らしが得られるかと思いきや、悲惨なエレベーター落下事故が発生。多数の犠牲者が出てしまう。さらにその夜、局地的な嵐に見舞われマンションは孤立。街では途方もない大量殺人鬼が跋扈しているという。全てが異常な状況下で、未曽有の怪奇現象が起きようとしていた…


予告編

感想





2017年のインドネシア産ホラー「悪魔の奴隷」の続編。

今回は劇場で鑑賞してまいりました。客層は女性と親子連れ(年配)が多かったですね。まあ多いと言っても40席くらいの小さな劇場ですが。ちなみに画面はほぼ全編に渡って非常に暗いので、家で見るのは相当ツライでしょう。その場合部屋を真っ暗にして鑑賞する必要があるかと思われます。



内容は、前作で家族3人を失いながらも生き延びたリニと弟ふたり、父親の4人が引っ越し先の高層マンションで嵐と殺人鬼と激烈な怪奇現象に見舞われるという話。



小粒だった前作と比べると相当なスケールアップ、クオリティアップを果たしています。これは実に素晴らしい出来栄え。久しぶりにオカルト系のホラーでマジな怖さを味わうことができました。インドネシア映画としてはさぞ破格の製作費がかけられたに違いない!…と思ったんですが、エンドクレジットはかなり短かったのでそうでもないようです。



周りになーんもない原っぱの真ん中にポツンと建てられたコンクリート打ちっぱなしの高層マンションは、同じインドネシアの「ザ・レイド」を彷彿とさせる佇まい。さぞかし治安も悪かろうと思いましたが、どちらかと言えば気の毒な社会的弱者の入居者が多く、マチェーテやトンファーを振り回すネシアンギャングは住んでいないようです。どっちのマンションが恐ろしいかはなかなか甲乙つけがたいですね。



尺は119分とホラー映画にしてはかなり長いのですがストーリー性は薄く、観客を怖がらせることにひたすら心を砕いていた印象。その分恐怖シーンはかつてないほどに盛り沢山です。なんせ2000人も殺した殺人鬼が街を跋扈しているというのは桁外れすぎます。一日一殺でも5年半ぐらいかかるじゃないか。さらに、本格的な怪異の始まりとなるエレベーターの落下事故がとんでもなく意地悪く容赦なく悲惨でビックリ。日本や西洋のホラーではあんな所業はまず不可能です。その犠牲者たちを部屋に安置したまま嵐で停電したマンションに閉じ込められるというシチュエーションの厭さ加減も素晴らしい。そこでリニと弟のトニー、ボンディがそれぞれ別の恐怖と対峙し、クライマックスで合流するという流れ。



その中でもトニーが犠牲者の安置された部屋をひとつひとつ丁寧に見回るくだりのしんどさが特にたまらない。そんな重たい仕事を未成年者ひとりに軽~く頼んでんじゃないよと言いたい。嵐で停電して真っ暗なうえにマッチの火だけを頼りに悲惨な遺体のそばに寄るのは怖すぎます。私なら確実に発狂しますよ。というか遺体をわざわざ各自の部屋に置いとかなくてもいいのではないか。家族がいるならまだしも、その世帯が全員死んでる場合はどうなんですかね。そんな部屋とてもじゃないけど入れないよ。そもそも安置した人が出る時にチェックすりゃいい話じゃないですか。それがインドネシアのしきたりなんだと言われたらそれまでですが。



前作に続き、本作も「アラーに祈りを捧げても無駄だよ」という描写があります。いや、それともあの程度では信仰心がまだ足りないと言いたいのか。作中最も敬虔な信者だったおじさんはアラーの守護を微塵も疑わず、悪霊を恐れるどころか存在をまるで信じることもなく平気でウロウロしていたのが印象的でした。私は罰当たりな自称スパモン教徒ですが、ああいうメンタルを持てるならアラーやキリストを信仰する意味もあるかなあと思いました。



先ほどストーリーは薄いと書いたものの、クライマックスでの怒涛の展開は前作を観ている者にとってはなかなかの衝撃です。続編っぽくない邦題なんで前作を知らずにこっちを観てしまった人も多いかと思われますが、それは少々もったいないかなと。これから観る人はちゃんと前作から入りましょう。本作のエンディングの様子ではまだ続編を撮るつもりのようですし。



ということでほぼ絶賛するしかない本作ですが、唯一の問題は観ていてめちゃくちゃ疲れるということです。なんせ嵐の夜に停電したマンションが舞台なので画面が非常に暗く、明かりといえば主にカミナリやマッチ、カメラのフラッシュでやたらチカチカした見せ方を繰り返してくる。ホラーとしては効果的な恐怖演出には違いありませんが、これだけ長尺の作品であれだけ大量に盛り込まれるとさすがにグッタリしました。



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