「ザ・ディープ・ハウス」 感想 水中の恐怖と言えば…

概要

原題:THE DEEP HOUSE

製作:2021年フランス・ベルギー

発売:インターフィルム

監督:ジュリアン・モーリー/アレクサンドル・バスティロ 

出演:ジェームズ・ジャガー/カミーユ・ロウ/エリック・サヴァン/アレクシス・セルヴァース/アン・クレサン/キャロライナ・マッシー 


世界の廃墟を巡って撮影するyoutuberのティナとベン。地元民の案内でフランス郊外にある湖に沈んだ屋敷を探検することに。だが、その水中屋敷では忌まわしい悪霊が獲物を待ち構えていた。


予告編

感想




「屋敷女」「呪術召喚」の監督コンビによる新機軸の心霊ホラー。


話としては浅薄なyoutuberが曰くつきの廃墟へ行ったら悪霊に襲われてえらいめに…ってことでありきたりを通り越してテンプレート的な流れです。



本作における唯一最大のセールスポイントはその廃墟が水中に沈んでいること。この核となるアイデアが非常に奇抜なだけに、その他の要素はあえて凡庸なもので固めてきたのではないかと思いました。



そこらじゅうに怪しげなオブジェが漂い、青白いゾンビのような悪霊がゆらめきながら迫ってくる。この水中心霊屋敷のロケーションは素晴らしいです。水中セットのクオリティは本当に高い。小道具にもこだわりが見て取れるし、撮影には莫大な手間がかかってさぞかし苦労したのではないかと思われます。



ただ、それがそんなに面白いかと訊かれるとそれほどでもないと言わざるを得ないのが悲しいところ。屋敷に入るのは2人だけだから殺され役がいないし、水中ゾンビの動きは緩慢すぎて緊張感に欠けます。冷水の中だと陸上より何となく清潔感があるし。一番もったいないのは、何かが起こった時にやたらパニクるもんだから画面では気泡がゴボゴボしているばかりで結局何が起こっているのか分かりにくいことです。もう少し冷静な人物を主人公にしてほしい。



屋敷の怪異も悪魔崇拝からの猟奇殺人に端を発するものなのでこれまた非常に類型的。それでも別にいいんだけど、舞台設定とのシナジー効果が何もない。どうせなら何か水に関係する悪魔を祀っていたとか、オカルト的な伝承か何かが絡んでいて謎解きの一つでもあればなあと思わなくもないです。



公式では酸欠ホラーと宣伝されていますが、息苦しさの点でも「海底47m」には及ばない印象。「MAKO」よりは良いけど。幽霊屋敷でなければダイビング中の恐怖を描いた映画はわりとあるものです。主にサメ映画に。というか水中ゾンビよりはサメの方が普通に怖いと思うんですよ。



なので本作も水中屋敷でサメに襲われる展開を盛り込んだ方が面白いのではないか?と思いましたが、それではコンセプトが崩れてしまい、ただのサメ映画になってしまう可能性も否定できない。となると、舞台はサメを崇拝するあまり屋敷を水中に沈めてしまった異常者の家ということにして、サメの悪霊が襲ってくる作品にすれば良かったのではないか。そんな風に思いました。


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