「アドレノクロム」 感想 人間の副腎を求めて

概要

原題:Adrenochrome

製作:2018年アメリカ

配給:エクストリーム

監督:トレヴァー・シムズ

出演:トレヴァー・シムズ/トム・サイズモア/ラリー・ビショップ/アダム・ハス/ジャッキー・ホランド


奴らは殺した人間の内臓や血液で、究極のドラッグ<アドレノクロム>を作り続けていた…政治、経済、芸能…、世界の闇に蠢く黒い噂と陰謀論とともに語られる“アドレノクロム”。アドレナリンの酸化によって形成されるその化合物は、強烈な麻薬効果や若返り効果があると信じられている。抽出には幼い子どもが誘拐や人身売買の犠牲となり、その流通には秘密結社や悪魔崇拝者が絡んでいるという噂も絶えず、<悪魔の薬>とまでいわれている。

(↑amazon商品紹介より)

予告編

感想





エクストリーム(トカナ)配給で劇場公開された内臓ドラッグ映画。

毎度ながらよくこんな怪しい映画を劇場で公開できるもんだなと感心します。どれもこれも極々一部の人にしか刺さらない作品に見えるのですが、ちゃんと採算取れてるんでしょうかねえ。



今回は都市伝説的に語られる人間由来の怪しいドラッグがテーマということで、トカナ系にしては珍しくカニバリズムとは関係ないと思われました。…が、どうも生きた人間をかっさばいて副腎を抜き取り、それを原料に精製するのかと思いきやそのまま生で齧っているように見えるシーンがあったりするので、やっぱり本作もカニバリズム映画の一種でもあると考えられます。ここまで来るとやはりトカナは異常カニバリズム愛好者集団であると言ってもいいのではないか。儲けようとしているのではなく、カニバリズムを啓蒙するための宗教的活動として資材を投げうってこういう映画を全国ロードショーしているのではないか。


まあそういう映画配給会社がひとつくらいあってもいいか。



主人公のウエストが冒頭でそのアドレノクロムなるドラッグを摂取すると、それ以降はほぼずっと支離滅裂でドラッギーなミュージックビデオ風のとりとめのない映像の羅列となり、まるで飲みすぎて悪酔いして汚いトイレで寝てしまった時に視る悪夢のように不快な酩酊感を味わうことができます。ただ本作、支離滅裂なようでいて様々なアメリカ文化や陰謀論などのネタが仕込まれているようで見る側にもそれなりの教養を求めてきている風でもあります。当然底辺クソ映画マニアで「地獄の黙示録」すら観ていない私ごときにはそんなものはなく、大体何も分かっておりませんのでご了承下さい。



そういう堕落した人間的に気になる見所といえば、やはり人間の副腎を求めて殺人を繰り返すジャンキー殺人鬼集団です。しかし、一見「ハングリー 湖畔の謝肉祭」と同じくらいのグロ描写があるように見えて実はただ血糊を塗ったくっているだけという超省エネ手法。やっていることは極めて残虐なはずなのに、恐怖の欠片も感じられないのはもったいない。別にホラーじゃないからその辺はどうでもいいんだろうとは思いますが、アドレナリンが出ている人間の副腎を抜き取るのが目的なのだからやっぱり「恐怖」という感情を蔑ろにしてほしくはなかったかなと。



本作はそんなことよりも、愛する女を拉致された怒りでランボー的な超軍人に覚醒したウエストがジャンキー殺人鬼集団をなぎ倒していくアクションシーンの出来が一番良かったです。チェーンソーの刃が動いてなかったりと安いノリではあるものの実に荒々しく、スピーディな野蛮さが溢れていて素晴らしい。この製作・監督・脚本・撮影・主演のトレヴァー・シムズという人はゲテモノドラッグムービーよりももうちょいアクション側に軸足を移して映画を作れば大成する可能性があるのではないかと思いました。



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