「殺人犯ジョン・リスト」 感想 実話ネタをやる必要があったのか?

概要

原題:A KILLER NEXT DOOR

製作:2020年イギリス

配信:トランスワールドアソシエイツ

監督:アンドリュー・ジョーンズ

出演:ウィリアム・メレディス/ハリエット・リース/パトリック・オドネル/エド・アレンビー/ナイジェル・バーバー


自分の妻と子供たちを殺害し、18年間にも及ぶ逃亡生活を続けていた男ジョン・リスト。彼を執拗に追う刑事はテレビ番組を利用して捜査することを思いつく。同じ頃、足をケガして部屋に引きこもっていたステファニーは、隣人のクラークを覗き見しているうちに彼が殺人犯ジョン・リストではないかと疑うようになる。


予告編

感想



実在の殺人鬼ジョン・リストを題材にしたサイコスリラー。

アメリカでの事件なのになぜかイギリス製で監督もイギリス人。多分イギリスで撮影してますよね。

…っていうか、あのアンドリュー・ジョーンズ監督作品ではないですか。えらい久しぶりだなあ。リー・ベインが出てないから観終わるまで気が付かなかったよ。



アンドリュー・ジョーンズ監督となると納得のかなりつらい出来。それなりにインパクトのある実話のはずなのに、どうしてこうもダルダルで薄くて緊張感ゼロになってしまうのか。あまりに貧弱すぎる。これなら世界まるみえとか仰天ニュースの再現ドラマの方が余程興味を惹かれると思うし、何ならウィキペディアの当該項目でも読んでいた方がまだ面白いんじゃないでしょうか。



まず殺人犯ジョン・リストの描写が圧倒的に不足していると感じてしまいます。冒頭で自分の家族を殺害するくだりはともかく、あとはほぼ何もしてない。再婚して大人しく暮らしているだけで、異常な行動といえばせいぜい奥さんの服装にケチをつけてたり、なぜか背広で芝刈りをしていたくらい。彼がなぜ家族を殺すに至り、新しい家族を得て何を望んでいたのか…といった気になる部分がほとんど描かれておらず、この映画化の意義がよく分かりません。



隣人のステファニーはケガをしてヒマだからといってジョンを観察しており、何か怪しいと感じるや自分の彼氏を送り込んで調べさせたりする。その彼氏はジョン・リストに見つかってしまってちょいと脅されたりしますが、ステファニー自身はノホホンと双眼鏡で覗いているだけなのであまりリスクも負っておらず、大したサスペンスも生まれようがありません。



ジョン・リストを追う刑事の方はテレビで事件を取り上げてもらうため、「18年も前の事件はちょっと…」と渋るプロデューサーやディレクター相手に必死で掛け合います。しかしそんなところに尺をとってじっくり見せられても非常に退屈と言わざるを得ない。結局そのテレビ番組を見たステファニーが通報して警察が踏み込むという流れも分かり切ってますし。



…かと思ったら怒ったジョン・リストがステファニーの家に乗り込んできて直接対決。これは史実ではなかろうしやや意外。まあそうでもしないと盛り上がりようがないか。とはいえジョンはせっかく銃を突き付けてたのに、松葉杖でつま先を突かれただけで「アゥッ!!」と撃退されてしまうのはいかがなものか。いくらなんでも弱すぎるだろうよ。



いや、でもアンドリュー・ジョーンズ監督の過去作「ジュラシック・プレデター」とか「フィアー・サーカス」あたりのことを思えば多少なりとも常識的な内容である分まだましな方だったとも言えます。「ジョン・リスト事件にめちゃくちゃ異常に興味がある」という犯罪マニアな方は見てみてもいいかもしれません。


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