「メッセージ 神のお告げ」 感想 神はなぜ信者に無茶振りするのか

概要

原題:The Binding

製作:2016年アメリカ

配信:トランスワールドアソシエイツ

監督:ガス・クリーガー

出演:エイミー・ガメニック/ジョシュ・ハイスラー/レオン・ラッサム/ケイト・フューグリー/ケイティ・パーカー


サラは聖職者の夫ブラムとの間に娘スカイアをもうけ幸せに暮らしていた。だが、スカイアの幼児洗礼を終わらせた後、ブラムが「自分の目の前に全知全能の神が現れた」と興奮気味に話す。戸惑うサラにブラムは「神の意思を実行しなければ世界は闇に包まれる。それを防ぐためには我が子スカイアを殺さなければならない」と到底受け入れがたい主張をするようになってしまう。



予告編

感想



トランスワールドアソシエイツ提供の配信スルー映画。

例によってitn distribution配給作品。


聖職者の夫ブラムが「私の前に全知全能の神が現れた!」「神の命で我が子を殺さなければ世界が滅ぶ!」と頭のおかしい主張をするようになってしまった妻サラの苦悩を描いたオカルトサイコホラー。



itn系なので基本めちゃくちゃ退屈ですが、それほど支離滅裂な内容ではなくそれなりにましな方であると思われます。とはいえキリスト教色がかなり濃く、空飛ぶスパモン教しか信じていない私にとってはひどく難解な内容に感じられました。



いくら聖職者でも「神が現れた!ガキを殺すぞ!」などと興奮している男の精神に異常があることは明らかですが、敬虔なる神のしもべにとってはそうではないようです。ブラムの異常な状態に対し、三つの可能性が示唆されます。まず本当に神が現れ、アブラハムと同じような試練をブラムに課したということ。あるいは神を騙る悪魔がブラムを惑わしているか。最後に、やっぱりブラムは酒とかで頭がいかれてしまったか。



全知全能の神が現れたと言ってもそれがビジュアル的に示されることはなく、ただブラムがそう言っているだけで、夜な夜な目覚めては銃を持ち出して何か良からぬことをやろうとしてたり、廊下に頭をひたすら打ち付けていたりと奇行が目立ちまくるので、やはりブラムの頭がおかしくなっただけのように見える。危険を感じるサラと、しかし自分は正気であると主張するブラムの間に亀裂が入ります。



サラとブラムは司祭に相談しますが、司祭はこんなことを言い出します。



「妻はキリストに従うように夫に従うべき

キリストが教会の頭であるように夫は妻の頭だ

教会がキリストに従うように妻も夫に従いなさい」



その言葉の出典元である「エペソ書」とやらが書かれた時代を考えると仕方ないんですが、今この文章を持ち出すのはいかがなものか。現代の価値観に全く適合しない古書をいつまでも崇め奉る意義は何なのか。神の為に子供をいけにえに捧げよ、という主題も同様で理解しがたいものがあります。神以上に人を愛してはいけないっていう教訓のようなんですが。



オチまで観ると、「本物の神がブラムの前に降臨していた」のが真実だったと考えられます。こういうのは「神に見えるけど実はそうじゃなかった」という展開じゃないとオカルトホラー、サイコホラーにならないと思うんですよ。本当に神の仕業だったとなると、本物の布教映画、宗教映画でしかなく、また別種のリアルな怖さがあります。いくら私がホラー映画好きでもそういう怖さを求めているわけじゃないんですよ。というわけで、あのラストはただの停電だったということにしておきます。

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