「ソリタリー カプセル471号」 感想 宇宙の孤独な囚人たち

概要

原題:Solitary

製作:2020年イギリス

配信:アマゾンプレイムビデオ

監督: ルーク・アームストロング

出演:ジョニー・サチョン/ロッティ・トルハースト/マイケル・コンドロン


地上から約240キロの宇宙空間。終身刑を受けた二人の男女は、2025年完成予定のコロニー計画のため宇宙へ送られた。しかし母船での緊急事態により、二人を乗せたカプセルは分離。地上管理室は救出への対応策を検討するも、状況は好転しない。果たして彼らは無事に生還することができるのか?

(↑アマゾン商品紹介より)


予告編

感想




アマプラ新作謎映画。

最近 Inspired Pictures high fliers filmsという製作会社の作品群が一気に追加されました。数が多すぎてとても全部観ることはできませんが、まずはこの作品から。



内容は小型宇宙船で孤立した男女2名(アイザックとアラナ)が何とか地球に帰ろうとする話。シチュエーション的には「ゼロ・グラビティ」に近いのかな。ただ彼らは宇宙飛行士ではなく犯罪者であり、宇宙コロニー建設のための人柱にされたとのこと。



本作の舞台は2044年だと字幕が出てたし、アイザックたちが搭乗しているカプセル471の作りや人工知能を見ても完全に「近未来を舞台としたSFなんだな」と思って観てたんですが、その宇宙コロニーは2025年完成予定だと言われて戸惑いました。アマゾンの説明にもしっかりそう書いてある。これは一体どういうことなのか…もしかして現代劇なの?

と思ったけど本当は2051年のようですね。字幕が間違っていたのか。



SF的には気になる所がいくつか。宇宙空間を漂うカプセル471の中では、疑似的に重力を発生させるためにアイザックたちの身に磁石をつけさせているという説明があります。が、主にアラナの長い髪の毛などが災いして全く無重力空間に見えない。それとも髪の中にもマイクロ磁石が仕込まれているのか。



それとカプセル471がジェット噴射して移動する場面にせよ、大気圏突入する場面にせよ、慣性の法則があんまり働いていないように見えるのもちょっと気になる。準備しても横になって腰にベルト1本締めるだけ。そんなんで大気圏突入なんかしたら、頭を激しくぶつけて脳みそが飛び出すわ背骨がぶち折れるわでえらいことになりそう。磁力による重力制御のおかげかもしれませんが、母船の爆風を浴びた時は普通に吹っ飛んでたしな…いや、あれも本当ならミンチになってもおかしくないぐらいの衝撃だと思うんですが。



これら一つ一つは大したことありませんが、全て合わさるとどうも宇宙空間にいる雰囲気がしなくなります。それは低予算なんだから仕方のないことだし、本筋でちゃんと楽しませてもらえればそんなこと全然気にしないんだけど、いかんせん動きが全くないうえに会話も退屈すぎていけない。短編向けの素材を無理に引き延ばしたような印象を受けます。良い点を挙げるとセットがそこまで激安ではないのと、VFXのクオリティが高く映像は綺麗であることです。



最初の1時間くらいは時間稼ぎくさい会話劇に終始し、何の緊張感もありません。アイザックたちは母船が爆発して宇宙に取り残された危機的状況で何をのんきにテレビのインタビューなど受けているのか。地上と話すなら話すでもっと訊くべきことや訴えることもあるのではないか。トイレや食料も一切なく時間的猶予はないはずだというのに、どうも切迫感がなさすぎる。



まあそんな序盤中盤を過ぎればアラナがサイコなテロリストと判明し、多少は緊張感のある密室劇になってはいきます。とはいえそもそもアイザックから「生き延びたい」という意思を全然感じないので、別に死んでもいいんじゃないかなとしか思えないのが致命的。「地球に残してきた恋人がいる」ってだけでは弱い…ってこともないはずですが、役者の演技に全く覇気がないのが原因でしょうか。こういう話ならもっと必死な空気を出してほしかったかなと思います。


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