「ファイナル・プラン」 感想 匂い立つ午後ローの香り

概要

原題:Honest Thief

製作:2020年アメリカ

配給:ハピネット

監督:マーク・ウィリアムズ

出演:リーアム・ニーソン/ケイト・ウォルシュ/ジェイ・コートニー/ジェフリー・ドノヴァン/ロバート・パトリック


銀行強盗のトムはこれまで900万ドルを盗み出し、その正体すら誰も知らない凄腕だった。だがトムは貸倉庫店員の女性アニーと出会い、これまでの罪を清算して添い遂げたいと思うようになる。そこでトムはFBIに自首して罪を償おうとするが、カネに目がくらんだ捜査官たちはトムを陥れアニーにまで危害を加えてしまう。


予告編

感想



テレ東がものすごい好きそうなリーアム・ニーソンのゆるゆるアクション映画。こんなマイルドで小粒な作品が田舎の映画館でもしっかり上映してもらえるのは非常にありがたい。連休中なのに客入りはサッパリでしたけども。なぜみんなこんないい映画をスルーしてしまうのか。人生に疲れた中年男にはこういうぬるま湯のような映画も必要なんですよ。中高年同士のピュアな恋愛要素もそこそこあるからおばさま方でもわりと楽しめる部類だと思うんですよ。


ところでリーアム・ニーソンってもうアクション映画からは卒業するってだいぶ前に言ってませんでしたっけ。それともこの程度ではアクションというほどではないってことかな。



内容は、愛する女性のために自首しようとした銀行強盗が、カネに目がくらんだFBI捜査官に陥れられるという話。主人公トムは凄腕の銀行強盗犯でありながら清廉潔白で純粋な心を持つ誠実な賢人という実に矛盾したファンタジーな役柄ですが、そんなんでもリーアム・ニーソンが演じていると「まあ、いいか…」と思えてしまうから不思議です。これがヴァンダムやラングレンだともう少しダーティな感じになるし、ニコラス・ケイジだったら最後に無数の銃弾を浴びて死にます。



そんなトムが「900万ドル返して自首するから刑を軽くしてくれ」とFBIに取引を持ち掛ける。オレはカネに興味が無いからカネ目当ての犯行じゃなかったんだよ、だから盗んだカネは手付かずだから全額返すよ、なんて言われてもどこの世界にそんな銀行強盗犯がいるのか。しかも惚れた女のために自首するという。こんなおとぎ話にはまるでリアリティのカケラもなく、FBIにも当然信じてもらえません。



しかし現実にカネを目の当たりにした捜査官たちは、それを横領してしまう。大丈夫だ、誰もあんなおめでてえ銀行強盗犯の言うことなんか信じるわけねえよ…となってしまっても何だか仕方ないように見える。私だってあの状況で相棒の捜査官に横領を唆されたら乗ってしまうかもしれません。もうちょいましな自首のやり方はなかったのだろうか。無理にムショで償おうとせず匿名でカネだけ送り返しておけば良かったんじゃないかな。



「これは宇宙からの贈り物だ、ローンも消えるぜ」



この悪徳捜査官の方がよっぽどリアリティがあって感情移入しやすいです。いや、主犯の捜査官は冷酷非道なんですがそれに乗ってしまった相棒の方がね。カネはほしかったけども人を傷つけたり殺すつもりなど毛頭なくて中途半端に狼狽えてしまうところが実に小物臭くていい。この捜査官たちはリーアム・ニーソン映画の敵役としてはあまりに弱々しく、そのへん物足りないと言えば物足りないけどそういう軽さ、緩さもたまにはいいよねと思える心地良さを覚えた作品でした。






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