「とっととくたばれ」 感想 ロシアにしては景気が良い

概要

原題:PAPA, SDOKHNI/WHY DON’T YOU JUST DIE!

製作:2018年ロシア

発売:キングレコード

監督:キリル・ソコロフ

出演:ヴィタリー・カエフ/アレクサンドル・クズネツォフ/エフゲーニヤ・クレッグツェ/ミハイル・グレヴォイ


恋人に父親の殺害を依頼され、ハンマー片手にそのアパートへやってきたマトヴェイ。だが、恋人の父親アンドレイは恐ろしくタフな悪徳警官だった。血みどろの激闘の末に気を失ったマトヴェイは拘束され、電動ドリルで拷問されてしまう。


予告編

感想



ロシア発のハイテンション・バイオレンス・コメディ映画。


恋人に父親の殺害を依頼された青年マトヴェイと、やたらタフな悪徳デカのアンドレイとのスプラッターで容赦のない殺し合いが実に楽しい。これはいつも暗くて重くてマジメになりがちなロシア映画らしからぬテンションの高さと過激なゴア描写。ロシア人のくせにバットマン柄のパーカーを着た青年に屈強なハゲオヤジがブラウン管テレビを投げつける絵面の破壊力。金玉を狙ってハンマーをブンブン振るうスリル。電動ドリルでギュインギュイ~ンと容赦なく風穴を開けていくシーンのたまらない痛々しさ。何だかんだ言って本当に電動ドリルで拷問しちゃうホラー映画ってあまりないんですよね。いや、別に積極的に使えと言いたいわけではありませんよ。



…なのですが、そのハイテンションなバイオレンスも結局序盤だけで終わってしまいます。中盤以降はいかにもロシア映画的な「人間の愚かさ」をスローなテンポでオシャレに芸術的に描き始め、ただただ血糊と暴力に満ちた凄惨な殺し合いを求めている私のような頭の悪い観客は置いてけぼりにされてしまいました。



邦題やジャケの雰囲気からすると序盤のバカなノリが最後まで続きそうな気配だったのでこれはかなりの肩透かし。あの馬鹿げた凄惨な殺し合いをオープニングで全部見せるのではなくある程度クライマックスにも配置してくれた方が個人的には良かったかな。せっかくあれだけ盛り上げた後で「どうしてこんな状況に至ったのか」だなんて、そんなこと別にダラダラ説明描写する必要ないと思うんですよね。その辺を掘り下げ始めると「家庭内暴力」とか「ロシア警察内部の腐敗」とか重苦しいテーマになってきちゃうので、どうしてもテンションダダ下がりでいかにコメディ的な演出を入れようとあまり笑えなくなってくるし。


とはいえ、その辺を差し引いてもロシア映画の中では楽しめる方でした。

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