「血みどろの入り江」(ネタバレあり) 感想 終わり良ければ総て良し

概要

原題:Ecologia del delitto/Reazione a catena/A Bay of Blood

製作:1971年イタリア

発売:キングレコード

監督:マリオ・バーヴァ

出演:クローディーヌ・オージェ/ルイジ・ピスティッリ/イザ・ミランダ/クリス・アヴラム/ラウラ・ベッティ


美しい入江のそばに立つ豪邸で、伯爵夫人が夫に殺害される。夫人が残した入江を相続するために親族や関係者たち、他にも無関係な若者が遊びに来るが、彼らは次々と無残な死を遂げていく。


予告編

感想



1971年製でスプラッター映画の先駆けと言われ、「13日の金曜日」の元ネタとしても有名な古典的名作。いずれ観ようと思いつつ放置していたらアマプラ始め各種動画サイトでマリオ・バーヴァ監督作が配信され始めたのでこの機会に観てみました。



話そのものは何だかごちゃついてて、いい加減なイタリアのジャーロらしいとっ散らかり方。オープニングで入江の持ち主である伯爵夫人が殺された後、その入江に無軌道な若者4人組が遊びにやってくるのですが、彼らはストーリーに何の関係もなくただの賑やかしにすぎないっていうね。30分もかけて全員殺されるけど別に本筋には何の影響もない。



ただ、彼らの生態と死にざまが「13金」にそっくりそのままと言っていいほどパクられているあたりは興味深いですね。1971年の映画なのにナタで顔面をザックリやったりとか、ベッドで寝ているカップルをまとめてヤリで串刺しにしたりとか、それまでにない新しい残酷描写だったんではないかと思います。まあ本作の公開から半世紀経った今見たところで、散々パクリ倒され過激に発展していった現代のスプラッターに慣れ切った身としては「これがオリジナルなんだなあ」という感慨が湧くだけで特別面白いわけでもないんですが。



そんな中今見ても感心する描写として、入江から上がった死体にタコがニチャニチャと気味悪くまとわりついているシーンが挙げられますね。海外ではデビルフィッシュと呼ばれ忌み嫌われているタコですが、日本人的にはなじみ深い食材なので嫌悪感もくそもない。そのタコを使って私にもあれだけ生理的嫌悪感を催させる描写をしたとなると、海外では相当のインパクトがあったんではないでしょうか。ホラーの恐怖演出にタコっていうだけでもなかなかレアで一見の価値がありますね。



また、誰が殺人犯なのか?と思って観ていると案外そういう単純な話ではなく、登場人物はみんな入江欲しさに殺し合っていることが分かってきます。私はあの入江のどこにそんな魅力があるんだかよく分かりませんでしたが、欲望に駆られた人間同士の凄惨な殺し合いというのはいつ見てもいいものです。ストレス社会で荒んだ心が癒されます。ただ、残酷描写という点では前述の若者たちを殺害した時以上のものが無いのでそこまで盛り上がりませんが。



で、その入江相続バトルロイヤルに何とか勝ち残った夫婦が「やったぜ!」と喜んでいたところを、彼らの幼い子供たちがどういうわけか猟銃でいきなり撃ち殺してオワリ。一体何というデタラメでアホ臭いちゃぶ台返しなのか。これはホラーではなく欲望に塗れた汚い大人たちが勝手に殺し合って勝手に自滅していくコメディとして撮られたのかもしれません。何にせよこのナンセンスな結末からは「こんな映画にマジにならないでよね」という監督の高尚なメッセージが伝わってきます。

今見ても凄く面白い!とまでは言いませんが、傑作と呼ばれるのも充分理解できるいい作品でした。


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