「ボルケーノ・パーク」 感想 活火山で儲けようとしたら大噴火

概要

原題:天火/Skyfire

製作:2020年中国

発売:アルバトロス

監督:サイモン・ウエスト

出演:ワン・シュエチー/ハンナ・クィンリヴァン/ショーン・ドウ/ジェイソン・アイザックス


火山学者のシャオモンは、天火島に作られた世界初の火山テーマパークで働いていた。シャオモンの父タオは噴火の危険性を訴えるが、誰も聞く耳を持たない。だが、オープンを控えて出資者たちが訪れる中、案の定火山が大噴火してしまう…


予告編

感想




「活火山を間近で楽しむ」という狂ったコンセプトのテーマパークを作ったら案の定初日に大噴火してしまいさあ大変! という実にアホ丸出しなディザスターパニック映画。



しかし、よく考えると中国人ならマジでこういうテーマパークぐらい作りかねない気もします。荒唐無稽なようでいて絶妙にリアリティがある設定。B級かと思いきや意外と金もかかっており、しかも監督があのサイモン・ウェストなのもあってか結構楽しめました。ここ最近見た中国映画の中では相当出来がいい方だったと思います。



…とはいえ、異常なほどツッコミどころ満載なのは間違いない。


中国人ならやりかねないと言ったものの、やはり活火山の火口まで遊びに行けるテーマパークなんてもののリスクを考えるとそれに見合ったリターンが得られるとも到底思えない。しかも本作の場合プレオープン直後に大噴火しましたからね。さすがに経営者が可哀想になりますよ。



「科学者の警告に耳を貸さない経営者」っていう一昔前のパニック映画のテンプレートを久々に見たんですが、そもそも火山学者の主人公シャオモンだって噴火は当分しないと思ってたからそこで働いてたはずなんですよね。それなのによりによってプレオープンの時になって「危険だから今すぐ閉鎖して!!」なんて言われてもそりゃ経営者も困るでしょうよ。



こういう話なので、そもそもこいつらが危機に陥ってるのは大体自業自得じゃん…アホばっかやん…とか思ってしまうとその後のスペクタクルなパニックアクションにもノレないのでそこは適当に忘れておく必要があります。頭カラッポにして観るべき映画なんです。



それさえ心得ておけば、襲い来る火山弾やマグマから間一髪で逃げまくるスリルを存分に楽しめます。ここはさすがハリウッドの一流監督だけあって実に素晴らしい。特に猛スピードで並走するモノレールからモノレールに飛び移るシーンの斬新さには目を見張りました。しかしシャオモンたちは間に合わず、すごい勢いでモノレールが脱線し火山の斜面に激突したうえ滑落!! これは万に一つも助かるわけがないだろ…と思わざるを得ないシーンでしたが、なぜか全員無傷で生還。いや、さすがにおかしい。「スゴいね、人体」で済ませていいレベルじゃない。そんなに丈夫ならあんな必死こいて飛び移る必要なかったし。



しかしその後もジープに乗ったまま斜面を激しく回転しながら転落したのに当然のように全員無傷というシーンが出てきたりするので、彼らはサイボーグか何かなのかもしれません。だったらスリルを求めてあんなテーマパークを作ってもおかしくない。



そうしたパニックの中で描かれる人間ドラマについてですが、またしても「父と娘の絆」をメインに据えたものとなっております。何回目だよこれ。中国映画はそうしなきゃいけないと中国共産党に義務付けられてんのか? と疑うレベルで本当に毎回毎回同じようなモンを見せてくれます。そりゃパニック映画で家族愛は定番だろうけども、なぜこうも「父と娘」の組み合わせに固執するのか全く分かりません。



まあメインキャラは不自然なくらい誰も死なないのでどうでもいいんですが、それより普通は悪役にされがちなテーマパークの経営者をすげえいい奴にしてたのが地味に良かったです。なんか普通に可哀想でしたからね。得意げに出資者にお披露目したと思ったらすぐ大噴火しちゃってさ。「毒のあるフグを食べるように、人はスリルを求めているのです」とか何とか言ってたけど、一口目で即当たったようなもんですよ。



そこでヒステリーを起こして主人公たちの足を引っ張るということもなく、一人で哀愁を漂わせながら酒を煽るっていう。なんであんな悲しい演出するんでしょうかね。火山にテーマパークを作っちゃうようなアホなのに、何だか泣けてくるじゃないですか。逃げ遅れてる女の子をちゃんと助けてるし、マジでいい奴ですよ。ただあの死にざまはカッコイイと言うべきなのかそれとも笑っていいところなのか迷うところでしたけども。


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