「ブラック・スマイル」 感想 家族に執着するサイコ子守り

概要

原題:A Stranger with My Kids

製作:2017年カナダ

発売:アマゾンプライムビデオ

監督:チャド・ロウチュク

出演:アシュレイ・スコット/ディラン・キングウェル/ウディ・ジェフリーズ


シングルマザーのカレンは、マニー(男性の子守り)としてアレックスを採用する。愛想が良く仕事もできるアレックスを気に入っていたカレンだったが、その裏でアレックスは家族に対する異常な執着心を持っていた。


予告編

感想





シングルマザーがマニー(男性の子守り)を雇ったら、そいつはとんだサイコ野郎だった…というテレビ映画。アマゾンプライム配信作。



向こうでは男性の子守りをマニー、女性の子守りをナニーと言うんですね。初めて知りました。ベビーシッターとは何が違うのかと思って調べましたら、一時的なシッティングではなく数年単位で契約して子供の教育にも踏み込んで第二の親のような立場としてその家庭に関わっていく存在だとか。ベビーシッターよりもプロフェッショナルなイメージの職業みたいですね。しかしこの手のテレビ映画多いけど、こういう職業のイメージダウンにはならないんですかね。



…で、本作の主人公アレックスはマニーとしてシングルマザーの家庭に入り込み、雇い主に愛されて家族として扱ってもらいたい…という願望を持っているちょっとヤバイ奴。長期契約でしかも幼い子供たちの面倒を見させるという重要な仕事のわりには、シングルマザーのカレンは第一印象だけであっさりとアレックスを雇ってしまう。



ただヤバイ奴とは言ったものの、本作はそのアレックス視点で話が進むためどうもアレックスに感情移入してしまいます。前半は本当にただの好青年にしか見えないのでなおさらそうなる。カレンの子供が学校でいじめられていると気づけば心構えや護身術を熱心に教えるし、それでもダメならいじめっ子を裏で軽く脅迫していじめを止めるナイスガイなんです。



そういう真っ当な(?)過程を経て子供たちの信頼を勝ち取っていくくだりは普通のほのぼのとしたホームドラマ的で、いつも人が死にまくる映画ばかり見ている私には結構新鮮に映ります。不覚にも「このまま平和な時が続けばいいのに…」などと柄にもないことを考えてしまいました。やっぱりたまには誰も死なない優しい映画も見ておくべきなのかもしれません(見るとは言ってない)。



そんな子供たちの父親になりたいと願うアレックスだったが、しかしカレンには結婚秒読みの恋人グレッグがいた。グレッグの求婚シーンを目撃して嫉妬に狂うアレックス。


…ということで、当然アレックスはグレッグをぶち殺す方向で動くのだろう…と思って観ていたんですが、そうではなく子供のおもちゃをグレッグに壊させたり、薬を盛って酒で酔いつぶれた風に見せかけたり…と何だか意外と優しい。アレックスよりも私の方が物騒な発想をしてしまっており、いかに自分が殺伐とした思考に染まっているのか気づかされます。


なので、アレックスはマジキチサイコ野郎と言うほどいかれた奴ではなく、ただ人より愛情に飢えているだけのかわいそうな青年なのでは…?という気がしてきます。というかただ酔いつぶれただけで結婚も破棄され一切の言い訳も許されずに絶縁されたグレッグって何なんだろうと思いましたが。



これでアレックスの願望を邪魔する奴はいなくなった…と思いきや、たまたま知り合った子守り仲間の女がなぜかアレックスに不自然なほど執拗に迫りまくり、ブチ切れたアレックスが女を殺害してしまうっていうちょっと雑な展開。…あれだけ拒絶されまくってるのに、あそこまで自信満々でグイグイグイグイ来られたらアレックスでなくてもぶち殺したくなるわなあと。まあサスペンスだし殺され役も一人ぐらい必要なのは仕方ないんですが、取って付けた感は否めなかったなと。


その後は急に本性むき出しにしてカレンたちに迫っていくわけですが、倒され方はなかなか粋なものでした。

テレビ映画なので視覚的な見せ場は全く無いものの、無難に楽しめる良作だったかなと思います。


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