「殺人ブルドーザー」 感想 元祖無機物暴走映画

概要

原題:Killdozer
製作:1974年アメリカ
発売:キングレコード
監督:ジェリー・ロンドン
出演:クリント・ウォーカー/ロバート・ユーリック/カール・ベッツ/ネヴィル・ブランド/ジェームズ・ウェインライト/ジェームズ・A・ワトソン・Jr

宇宙から青く光る謎の隕石が襲来。アフリカ西海岸から300キロ沖の小さな島に落下する。そこでは6人のアメリカ人作業員が整地作業を行っていた。ブルドーザーが落下した隕石に触れると、ブルドーザーに血に飢えた邪悪な宇宙意思が宿り、勝手に動き出す。そして暴走したブルドーザーは作業員を一人ずつ血祭りに上げてゆくのだった。

予告編




感想


1974年製作とかなり古いテレビムービーですが、いつの間にかDVDがリリースされていたので借りてきました。

私がこの映画の存在を知ったのは10年以上前のことです。確か映画秘宝から出た「日常洋画劇場」というムック本に書かれていたのを読んだんですが、意思を持ったブルドーザーが作業員を襲いまくるという極めてエキサイティングな内容に知的好奇心をいたく刺激されたことを覚えています。



↑この本。昔テレビでやってたわけのわからんB級~Z級映画についてこれでもかというほど濃密に詳しく書かれまくっており、ものすごく読み応えがあります。




私がこの手のヨタ映画に目覚めたのは「トラックス」という意思を持ったトラックたちが人間を襲いまくるエキサイティングな映画をテレビで見たことがきっかけだったので、この「殺人ブルドーザー」の存在は無視できないものでした。しかしいかんせん大昔にテレビ放映されたきりなので見る機会が全くなく、おそらく一生観ることはないだろうと思っていただけに2020年の今になってDVDを発見した時は驚きましたね。本当にDVD出すほどの需要があったんでしょうか? こういうヨタ映画を愛する好事家って何人くらいいるの?



…で、その内容なんですが、ものすごくシリアスなんですよね。謎の隕石のせいで勝手に動いて人を殺すようになったブルドーザーが題材のくせに超シリアス。いい年したオッサン6人がくそ真面目なしかめっ面で殺人ブルドーザーと真剣に戦う。ふざけて笑いを取りに来てるシーンなど一切ない。

これですよ。この変な生真面目さがこの手のヨタ映画の醍醐味なんですよ。しかもこれ驚いたことに原作小説が存在するらしい。一体どんな顔でこんなしょうもない話を本にしたり映画にしたりするのか。私も一度くらいそういう楽し気な仕事をしてみたいものです。


ブルドーザーが勝手に動くってことで、「トラックス」や「地獄のデビル・トラック」などとはまた一味違う珍シーンを拝むことができます。たとえば、崖の上から砂利を落として攻撃してくる場面なんかがそうです。ブルドーザーならではですね。と言ってもまあ…そこだけなんですけどね。

クライマックスでショベルカーと戦うシーンなどは金をかければ、いやブルドーザーを破壊して良ければかなりスペクタクルな名場面になれた可能性もあるんですが、さすがにあのブルドーザーはレンタル品だったらしく、やさしくまったりとぶつかり合うだけで終わってしまいます。とどめの一撃もすごく地味。しかし、この不完全燃焼感もマニアからすれば見どころの一つと言えます。


それにしてもこれ、子供の時に観ていたら素直に殺人ブルドーザーの暴れっぷりを楽しめると思うんですが、大人の視点で観ると「会社にどう言い訳するんだ?」という点が気になってしょうがない。現場監督のケリーは「ありのままを説明する」と言い切ってましたが、そんなことしたら確実に精神病院か刑務所にぶち込まれると思うんですよね。それでなくても9万ドルもするブルドーザーがオシャカになったんだからクビは確実でしょう。

なんというか、そういう余計なことを考えない純真な子供時代に観たかった映画ですね。


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