「サマー・オブ・84」 感想 爽やか青春ジュブナイル系かと思いきやえげつない鬱ホラー

概要

原題:Summer of 84
製作:2017年カナダ
発売:ブロードウェイ
監督:RKSS
出演:ジュダ・ルイス/グラハム・バーチャ―/コリー・グルーター=アンドリュー/カレブ・エメリー/ティエラ・スコビー/リッチ・ゾマー


1984年、オレゴン州イプスウィッチ。緑豊かな郊外の住宅街で暮らすデイビーは、エイリアン、幽霊、猟奇犯罪などの記事の収集に余念がない少年だ。そんな彼の15歳の夏に、近隣の町で同年代の子供たちばかりが狙われる連続殺人事件が発生。その犯人が向かいの家に住む警官マッキーではないかとにらんだデイビーは、親友のイーツ、ウッディ、ファラディとともに独自の捜査を開始する。はたしてデイビーの推理は正しいのか、それとも行きすぎた空想なのか。やがてデイビーの行く手に待ち受けていたのは、彼の想像をはるかに超えた恐ろしい現実だった……。
(↑ブロードウェイHPより)

予告編




感想


80年代のアメリカを舞台に、好奇心旺盛な少年、チョイワルのイケメン、トロいデブ、メガネ野郎の悪ガキ4人組がシリアルキラーの捜査というひと夏の冒険を経てちょっとだけ成長する。
…っていう、一見「スタンド・バイ・ミー」のオマージュ全開でノスタルジーに浸れる爽やか青春ジュブナイルムービー。…のように見せかけて、その実態は観客に多大な精神的ダメージを与えることを目的とした鬱ホラーです。これは非常にタチが悪い。まあ、そこは後で述べるとして、まず80年代の再現度が高くて非常にいいです。ボウリング場のゲームコーナーにさりげなくあの幻のゲーム「Polybius」なんかが置いてあったりして、細かいところにもいちいち遊び心が感じられます。隠れ家に集まる少年たちの友情もなかなかに微笑ましく、本作のキモがラスト20分にあるとはいえそこに辿り付くまでの経過も充分退屈させない良作だと思いました。いやむしろラスト20分はカットして「やったな」とタッチしたシーンで終わってくれてもそれはそれでスッキリできて良かったのかも。




近所に住んでる中年警官のマッキーが、もしかしたら最近話題のシリアルキラーかもしれない。新聞記者の息子でオカルトや猟奇犯罪に深い興味を持つ少年デイビーはマッキーの家で行方不明の少年を目撃し、仲間と共にその証拠を掴むべく尾行や独自の捜査に傾倒していく。

…まあ私も休みの日は大体引きこもってしょうもないホラーばっかり観ている怪しい独身男ですから、もしかしたら本作のマッキーのように近所の少年たちからシリアルキラーだと疑われたりすることもあり得るかもしれません。子供の頃「スタンド・バイ・ミー」を観た時のように少年たちに感情移入するのではなく、いつの間にか疑われているオッサン側の視点に立ってしまっているという悲しみ。マッキーが本当に犯人かどうかは終盤まで分かりませんからね。私はマッキーよりニッキーの方が疑わしいと思ってたんですが。


そういう風に観ていると、デイビーの行き過ぎた調査にはちょっと共感しにくいところ。マッキーの家を盗聴しようとしたり、庭を掘り返したり、未成年なのに車で尾行したり、家に忍び込んだり。普通の映画的にはそれでも最後には犯人が捕まり、少年たちの違法行為も若気の至りで済まされる話です。しかし本作はそこを逆手にとって「現実的に考えたらこうなるだろうよ」ってのを無慈悲かつストレートにお出ししてくれます。これが非常に後味が悪い。

とはいえメンバーの家庭事情を深く描写していたらもっともっとキツく出来たと思うんですが、そこはいまいちアッサリしてたのでトラウマ級とまでは言えず少々もったいない。「母さんを置いて死ねない」を思わせぶりなワンシーンだけでなくもっと掘り下げていてくれたら…。しかしそれでも、シロウトがうかつに殺人犯を追いつめてはいけないってことは充分観客の心に刻み付けてくれます。フィクションぐらい勧善懲悪のハッピーエンドであってほしいと言う人は観るべきではありませんが、鬱ホラーが好きな人にはそこそこおすすめです。




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