「ポスト・アポカリプス」 感想 どうしてこれを「クワイエット・プレイス」のパチモンにしなかったのか

概要

原題:The Quiet Hour
製作:2014年イギリス/アイルランド
発売:株式会社ハーク
監督:ステファニー・ジョアランド
出演:ダコタ・ブルー・リチャーズ/カール・デイヴィス/ジャック・マクマレン

地球の資源を狙ったエイリアンの侵略に遭い、人類はほぼ壊滅した。平穏が訪れるのは一日のうち2時間だけ。そんな状況の中、サラは目の不自由な弟トムと2人で何とか生き延びていた。ある時、負傷した迷彩服の男がサラたちの家へ逃げ込んでくる。彼は無法者に追われていたのだった。

予告編





感想

今月からレンタル開始の新作ですが、製作自体は2014年とちょっと古めのイギリス・アイルランド映画。めちゃくちゃ地味~な超低予算の自主製作(多分)映画です。何で5年も経った今、こんな素朴に陰気臭いものをわざわざ輸入してきたのでしょうか。それと「ポスト・アポカリプス」とは終末ものを総称するジャンル名のようなものなので、そのまま邦題とするには不適当ではないかなと思います。


本作の原題は「The Quiet Hour」なので、そのまま「クワイエット・アワー」としてしまえばレンタル業界でちょっと前にブームになった「クワイエット・プレイス」便乗モノの新作としてもっと注目度を上げることが容易に出来たと思うんですが、なぜあえてそれを避けたのか。無理やりにでも便乗したがる悪徳配給会社ばかりかと思えば、逆にそれを嫌がる気難しい…いや気骨ある配給会社もある。実にわけのわからん業界ですね。


内容は本当に死ぬほど質素で、エイリアンに侵略されてしまった後の終末的世界を描いてはいるものの、エイリアン自体は全く出てこないし宇宙船がチラッと映るくらいでスペクタクルなシーンなどは絶無。


予告編でもキャッチーな要素としてアピールしている「一日に2時間だけ平穏が訪れる」っていう面白げな設定があります。いかにもそれ以外の時間は隙あらばエイリアンが襲ってくると言ってるように聞こえるんですが、それが全く生かされていないのはどうしたことか。一応、その時間以外に外へ出ると宇宙船に吸い上げられてしまうらしい描写がラスト近くに1回だけあるものの。それでもアスベストの下にいれば安全というユニークなルールがあるものの。家の中にいる分には全く関係ないようで、だいたい家の中に閉じ籠っている姉弟にそこまでの緊張感はありません。


なのでその一軒家の中で繰り広げられる人間ドラマの方が本作のメインであり、それ自体は役者の演技も含めて出来は良い方かなとは思います。少なくとも観ていて苦痛ということはないです。ただ特に目新しい何かがあるわけでもなく、その人間ドラマもなんだかやけに繊細で、100年前の古典SF短編小説を読んでいるかのような慎ましやかでおぼろげな味わい。刺激的で濃い味付けのハンバーガー的なアメリカ映画に慣らされてしまった人間からすると本作は塩だけで味付けしたすまし汁のようなモンだと言えます。なのでこれを楽しむのはちょっと難易度が高いかもしれません。


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