「犬人間」 感想 ヒトは、どこまでイヌになれるか

概要

原題:GOODBOY

製作:2022年ノルウェー

配給:ハーク

監督:ヴィルヤル・ボー

出演:ガルド・ロッケ/カトリンネ・ロビーセ・オプスタッド・フレドリクセ/ニコライ・ナルヴェセン・リード/アマリエ・ウィロック・ニヤースタッド


シグリッドはマッチングアプリで出会ったクリスチャンと意気投合し、誘われるままに彼の豪邸を訪れる。だが、イケメンなうえに大富豪であるクリスチャンにはとんでもない問題があった。なんと彼は犬の着ぐるみを着たおっさんをまるで本物の犬のように慈しみ飼育していたのだ…


予告編

感想



犬の恰好をさせた人間を飼うイケメン富豪の狂気と、それに引きながらも彼の顔と資産に惹かれて受け入れることにした女性の打算と恐怖を描く北欧産サイコスリラー。

U-NEXTで1200ポイント使って鑑賞。



これは面白すぎる。確かにやってることは狂ってて怖いと言えば怖いかもしれない。けど、クリスチャンが犬人間をまるで本物の犬のように可愛がって世話をしている様子を北欧独特のあの冷たくて静かなムードで淡々と見せられるだけでもう噴き出してしまう。コメディを通り越して不条理コントかな?というぐらいシュールな笑いを提供してくれます。



しかしそんな特上サイコ野郎クリスチャンも顔がいいうえに大富豪。マッチングアプリでひっかかったシグリッドも


「なにこれ…犬人間とかあり得ないでしょ…」

と最初は引きつつ、


「まあそれも新しい愛のカタチよね!」


みたいな都合のいい思い込みをすることによって犬人間をあっさり受け入れてしまう。金の力は偉大なり。



まあでも分からんでもないから困る。だってこの犬人間、カワイイですからね。ディズニーランド等の隆盛を見ても分かる通り(行ったことないけど)、着ぐるみなんてものは見た目と振る舞いさえ良ければ過酷な現実という中身からは目をそらすことが可能なのです。生物は外見が9割。中身がただのおっさんでも問題はない。そんな犬人間をかわいがるカップル像も多様性のひとつとしてアリなのかもしれません。



…と、その辺まではユニークな絵面と滾る狂気の相乗効果でこれまでにない新しいサイコスリラー感を味わえ、私の内的宇宙が過熱膨張する一方でした。



が、そこで突如浴びせられる冷や水!!

このうえなく異常だと思って見ていたものが、実はそれほど異常ではなくむしろわりと常識的なものであった…という逆の意味での衝撃的展開に動揺を隠せません。もっともっと脱線暴走していくのかと思いきや、映画としてはある程度ノーマルな路線へと押し戻されてしまったようなガッカリ感。



ただ、それも普通のスリラーとは全く逆のやり口のように感じられ、それはそれでこの上なくひねくれているとも言えます。案外ノーマルだったとはいえ、緊張感あふれるスリラー展開と思わせてからのお尻ペンペンもたまらない。路線はともかく奴の内面はやはり極めて異常。



金はあるけど社会性には欠けていたせいでまともに友達が作れず、犬しか愛せない人間になってしまったという感じでしょうか。そう考えると彼の孤独と哀愁が感じられなくもない。にしてもツッコミ不在のシュールコントでここまで笑わせてくれるこのヴィルヤル・ボーなる人物は間違いなく只者ではありません。彼の今後の躍進には要注目であると言っておきます。


コメント

匿名 さんのコメント…
・原題「ME,YOU AND FRANK」
・クラウドファンディング映画
・監督23歳

つまり「進撃の巨人」作者の諌山創みたいなやつか
岩石入道 さんの投稿…
>2024年2月10日 8:39 の匿名さん

え!?この監督そんなに若いんですか?
しかもクラウドファンディングとは…
ますます今後に期待大ですな。