「PIGGY ピギー」 感想 デブで何が悪い

概要

原題:Cerdita

製作:2022年スペイン

配給:エクストリーム

監督:カルロタ・ペレダ

出演:ラウラ・ガラン/カルメン・マチ/リチャード・ホームズ/ピラール・カストロ


肉屋の娘サラはその豊満すぎる体のため同級生に子豚呼ばわりされ、常日頃から陰湿ないじめに遭っていた。その日もひとりプールで泳いでいた彼女は荷物を全て奪われ、裸同然の姿で自宅へ帰る羽目に陥る。だがその途中、いじめっ子たちが謎の男に拉致されている場面を目撃し…。



予告編

感想




肥満体のいじめられっ子が、殺人鬼に誘拐されたいじめっ子たちを助けようかどうしようか悩むような感じの話。もう少しスラッシャーホラー味があるのかと思ってたら案外そうでもなく、スペインの陽光の元で繰り広げられる陰惨でねじくれた青春暗黒恋愛ドラマといった趣きでした。



デブはデブというだけでからかわれます。チビでもハゲでも何でもそうです。ルッキズム許すまじ。人の劣等感をつつき回すヤツの方がよほど醜い心根を持った人間なのです。それに対抗するためには自分自身が外見に劣等感を抱かないようにせねばなりません。デブの何が悪い。ガリがそんなにえらいのか。たとえ若いうちは痩せていても、どうせ中年になれば多くの人は太るんですよ。一見痩せてる中高年がいても、大抵腹だけは出ているものです。



サラは家族にも同級生にも自己肯定感を下げられる苦しみを味わっており、特に本作のいじめっ子たちは悪質です。主人公サラが泳いでいるところをタモで叩いたり衣服を奪ったりする。しかも動画を撮ってバラまきあざ笑い、走るベーコン呼ばわりする。イジメもここまで行くともう呪い殺されても仕方がないように思えます。映画的には明らかにいじめっ子の方が殺人鬼よりも圧倒的に邪悪な存在です。



なので、そんないじめっ子たちが殺人鬼に車で拉致られる場面はちょっと爽快。宣伝ではリベンジホラーとか謳ってますし期待がふくらみますね。ただその様子を目撃していたサラに対し、なぜか同情的な顔でタオルをくれる殺人鬼が何か変。



家族にも友人にも恵まれないサラに唯一優しくしてくれたのがよりによってこの殺人鬼。しかも見た感じそこそこイケてなくもない男。これは殺人鬼に好意を持ってしまっても仕方がないかもしれません。殺人鬼の方もはみ出し者ゆえに集団からはじかれているサラに同情したという話ですかね。同情という域は超えてたようにも見えましたが。



まあ、しょせん私ごときにそんなセンシティブな感情表現を読み取って楽しめと言っても無理な話です。サラも殺人鬼もあまりしゃべりませんし。なので終盤のサラの選択もちょっと理解はしにくい。いや、本作は自己否定に囚われて周りに抵抗できずにいたサラが思いっきり殻を破る物語とすれば何もおかしくはないです。結局リベンジしてないとはいえあれだけやらかしまくれば痛快ではあるんです。…が、あの選択は真面目というか立派すぎてそこまでは乗れなかったかな。それとも私がクズなだけなんでしょうか。


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