「ワニゲーター」 感想 まるでサメ映画のようなワニ映画

概要

原題:SEWER GATORS

製作:2022年アメリカ

発売:コンマビジョン

監督:ポール・デール

出演:マノン・ページス/オースティン・ノールティ/ケニー・ベラウ/オースティン・フロッシュ/ショーン・フェラン/カータ・シモー/ポール・デール/チャールズ・アーリー/ソフィア・ブラズダ


ワニがたくさん生息しているティボドー市では、今年50回目のワニ祭りの開催を控えていた。だがそんな折、ある男性が自宅のトイレで下水道からやってきたワニにケツから喰われるという悲惨な事件が発生。保安官は専門家と共に祭りの中止を願い出るが、市長に一蹴されてしまう。しかしワニがトイレからケツに噛み付く事件は収まらず…


予告編

感想




我らのコンマビジョンがどこからか発掘してきたZ級ワニ映画の超新星。

今回もブルーレイを買い、スペシャルサンクスに名前を載せていただきました。20人くらいしかいなかったようだけどまあ気のせいでしょう。

「ワニゲーター」の語感に慣れてくると「アリゲーター」がアリの化け物のように思えてくるから困る。




トランスワールドアソシエイツが引っ張り出してくるZ級映画とはまた別の方向性で極限までいかれた作品です。



まず、本編がたった61分とただでさえ思い切った尺だというのに、オープニングとエンドクレジットの異様な長さで驚かされます。実質的には本編は30分くらいしかないんじゃないか。それでもオープニングクレジットについてはまだ


「心配しないで」


「映画はあと少しで始まる」


などと視聴者を宥める気づかいが見られるので我慢できます。が、あのエンドクレジットの超絶牛歩ぶりは間違いなく映画史上最遅。本当に動いているのかどうか目を凝らしてもよくわからんくらい遅い。その結果大したスタッフ数でもないのに軽く10分以上かかってるっていう。



でも、肝心の本編の方は意外とおもしろいです。トイレから出てきてケツにかぶりつくという襲い方は「ハウス・シャーク」「デストイレ」を彷彿とさせますが、ストーリーの本筋自体は「祭りが近づいてきた町で下水道ワニ騒ぎが起き、保安官が中止を申し入れるものの欲深い市長がそれを認めない」…という懐かしのジョーズ系の流れ。



ただ本作がユニークなのはそれがハンバーガー祭りやカボチャ祭りなどといったありきたりなものではなく「ワニ祭り」だってことです。ワニ祭りを開催するところにワニが現れたからといってどうしてワニ祭りを中止する必要があるのか。むしろウェルカムではないのか。



もしアミティで開催されるのがサメ祭りだったのならブロディ署長だって市民のひとりやふたり喰い散らかされようが黙って傍観してたんじゃないかと思います。



そんな矛盾、皮肉を抱えたままティボドー市民を襲うのはトイレだけでなく蛇口や排水溝から飛び出す小ワニの群れ。「地獄の業火に焼かれよ」とか何とか言いながらフライパンで子ワニ人形をソテーするシーンが本作のハイライトでしょう。



唖然とするほどZ級、キラートマトの冒頭を思い出すクオリティ。アメリカ人の脳はこの半世紀ほど全く進歩していないかのようです。だが、それがいい。それでいい。どこの国にも守り抜くべき伝統というものがあるのだから。クライマックスで暴れる巨大ワニ(初代PSレベルのCG)を見ながら、そんな風に思いました。



「ワニゲーター」(Amazon Prime Video)



コメント